【FBプロフェッショナルへの道①】ファッション市場の規模を知ろう

2023/10/27 15:00 更新


 「ファッションビジネス(FB)プロフェッショナルへの道・明日のために」は、ファッションの市場規模、産業や流通の仕組み、企業動向を分かりやすくお伝えする基礎講座です。この業界で働き始める人たち向けに月2回(第2、第4金曜日)掲載します。まずは「データでみるファッションビジネス」からです。第1回は日本のファッション市場の規模を見ていきます。

日本の衣料消費市場の規模は?

  • 22年は8兆8847億円
  • 前年より4.1%の伸び
  • コロナ前比は8.2%減

 日本で服は年間どれくらい売れているのでしょうか。繊研新聞社が推定した22年の衣料品の消費市場規模は8兆8847億円で前年比4.1%増加しました。直近10年間の市場規模の推移をまとめたグラフ①で見ると、20年に大きく落ち込み、その後21、22年と連続で増加しているのが分かります。

 13~18年まで衣料品の消費市場規模は緩やかな増加傾向にありましたが、19年は暖冬と消費増税の影響で若干減少しました。20年は新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、多くの商業施設や大型小売店が休業を強いられ、2ケタ減となりました。

 21年も緊急事態宣言が断続的に出されましたが、極端に落ち込んだ前年の反動で市場規模は増加に転じました。22年は外出制限が解除された3月以降、店頭に客足も戻り始め、さらに規模は回復しました。

 ただ、コロナ禍の時期に生活スタイルが変化したことに加え、インバウンド(訪日外国人)によるファッション購買も回復しておらず、22年の市場規模は19年比では8.2%減と、依然としてコロナ前の9億円台には届かない状況が続いています。

供給量と価格の推移は?

  • 22年は37億2770万枚
  • 4年連続で40億枚割れ
  • 価格は上昇傾向に

 グラフ②は市場への供給量と1年間に市場に供給される服の数量を棒グラフで、金額ベースの市場規模と供給量から算出した服の平均価格を折れ線グラフで表したものです。22年の供給量は37億2770万枚で21年比2.5%増加しました。

 過去10年で見ると、20年からの3年とそれ以前で、ファッション業界には大きな意識転換がありました。市場に供給される服が全て正価で売れることはなく、シーズン終わりにセールで値引き販売することはファッション業界の長年の慣例でした。

 ところが20年はコロナ禍の影響で通常より多く値引き販売を強いられ、収益性が低下しました。このため、21年から多くの小売業が適正量の仕入れと適時販売を心掛け、セールを減らすようになりました。

 一方、服の平均価格は20年を底に21年から上昇傾向にあります。後述しますが、21年後半から為替が円安傾向に転じたことに加え、22年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻が世界的なインフレに拍車をかけ、服の調達コストが上がっていることが背景にあります。

消費者が服に使う金額は?

  • 所得増えず支出横ばい
  • 必需品以外は節約
  • 服への支出1万円以下

 日本人は毎月ファッションにどれくらいのお金を使っているでしょうか。表は家計支出に占める「被服及び履物への支出」、家計支出の総額、服の平均単価、為替の13~21年の推移をまとめたものです。

 家計支出の合計は20、21年に27万円台に落ち込みましたが、それ以外の年は28~29万円台で、22年は10年前とほぼ同額です。このうちファッションに使うお金に相当する被服及び履物への支出は19年までほぼ4%台前後で推移していましたが、直近3年は3%台前半まで低下し、1万円台を割り込みました。

 服に使う支出が減った理由として大きいのはコロナ禍で外出機会が減ったことです。21年後半から22年にかけては生活必需品を中心にインフレが進み、消費者が節約志向を強めたことも、ファッション購買の減退に拍車をかけました。

 為替も22年は10年前に比べ、3割以上円安が進みました。低金利政策が続く以上、円安傾向は今後も続くと見られ、服もそれ以外の商品も値上げが続くため、今後もファッションへの支出は増えそうにありません。

服の価格と購入枚数は?

  • 直近3年の価格上昇
  • 購入量も増えず
  • 円安が懸念材料

 グラフ③は13年を起点に、被服及び履物への支出、服の平均単価、為替、消費者の服の購入量がどのように推移したかを表したものです。服の平均単価は緩やかな上下動はあるものの、この10年間、大きくは変化していないことが見て取れます。

 前述の通り、所得の伸び悩みから家計支出は過去10年ほぼ増えていません。ファッション業界はこれまで服の値段を据え置くことで需要を喚起してきたわけです。実際、15年に為替が円安に転じた際も服の平均単価は大きくは上昇しませんでした。

 ただ、被服及び履物への支出と平均単価で単純計算した年間の服の購入点数を見ると、22年が48枚で、10年前に比べ15枚減っています。20、21年に比べ、外出機会は増えたはずですが、服を買う枚数は増えていません。

 今後の懸念材料は為替動向です。22年は円安が急激に進み、平均レートは1ドル=130円台。13年に比べ3割以上の円安です。ファッション業界ではすでに22年後半から値上げが相次いでいます。円安に歯止めがかからなければ服の価格はさらに上昇し、服の購入量に影響しそうです。

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