連日の猛暑のなか、昨年からの編み物ブームが続いている。手芸専門店では、毛糸の売り上げが7月も前年同月比30%増~3倍近くという「これまでにない盛り上がり」。SNSを背景にしたブームが今回の特徴で、2年目に入る今秋冬も人気の継続に期待。各店はSNSを使った発信にも力を入れる。
(河邑陽子)
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人気の兆しが見え始めたのは、訪日外国人が戻り始めた23年秋ごろ。海外ではコロナ下で編み物を始めた人が多く、SNSで発信する人が増え世界的に人気が上昇した。日本でも韓国発アイドルグループ「ルセラフィム」の宮脇咲良さんのSNS投稿を契機に、24年秋に10代後半~20代前半の女性客が一気に増えたという。
新宿オカダヤ本店では、24年10月から前年同期比で売り上げが3倍ペース。ユザワヤでも昨年11月以降、毛糸関連商品の売り上げが50%増。ともに客数は2倍以上と盛況だ。イオンの手芸専門店パンドラハウスでも1月~7月半ばの売り上げは毛糸が30~50%増で推移。初心者が増えたため、かぎ針など関連用品も50%増と大幅に増加。「40年ほど前の手編みブームを上回り、かつてない盛り上がり」となっている。

増えているのは10~20代を中心としたMZ世代の初心者だ。SNSで見たバブーシュカや猫耳帽、ポーチなどを作りたくてかぎ針編みで小物から始める人が多い。100円均一ショップで買える材料で始められる手軽さも受け、百均の毛糸が品薄になり手芸専門店で買う客が増えた。
「教本の購入も勧めるが、ユーチューブを見て始める人が主流」(パンドラハウス)。編み図より、動画で手の動きを何度も見た方が分かりやすいため、異素材や様々な色を使って流行のカラフルな作品に最初から挑戦する人が多いのが従来との違い。これまでは同じ毛糸をまとめて買い、単色のマフラーやセーターを編む人が多かったが、自由な発想で編み物を楽しんでいる。「夏はラフィア風の糸で、かごバッグを編む人が多く、自家需要が中心。推し活で使うライトやうちわ用グッズを作る人も目立つ」(オカダヤ)という。

パンドラハウスが開く初心者向け講習会には、小学生も含む若い世代の参加者が増えた。オカダヤも「学校の休み時間や電車の車内で編み物をしたり、未経験者の友人を連れて店に来て材料や作品を教えた後、カフェなどで編み方を教えてあげる人も目立つ」と話す。
背景には、編み物の癒やし効果もあるようだ。「集中して編むと無心になれる。完成した時の達成感も魅力。スマートフォン疲れで、リラックスできる編み物にはまる若い人も多いのでは」という声もあり、SNSの浸透が逆に人気を後押しする構図となっている。
ブームに対応し、ユザワヤは材料や道具の編み物キットにレッスン動画のQRコードを付けた商品の販売を開始した。オカダヤはブログやSNSで毛糸の新商品とその糸を使った作品の作り方を発信、「今秋冬もブームが続くのでは」と期待している。