【記者の目】国内縫製業・ニッターの現状と今後の方向性 人材確保が大きな課題 デジタル化への設備投資急務
縫製業・ニッターなど国内工場の経営環境は引き続き厳しい。人口減・少子高齢化が深刻な地方では人材確保や労働条件の改善など課題も山積している。それでも現在、生き残っている工場には設備投資や新規事業に意欲的なところも多い。繊研新聞社ではアンケート(縫製業51社、ニッター18社、その他1社)を実施し、これからの物作りの可能性を探った。
(大竹清臣=東京編集部メンズ担当)
行政の統計によると、国内縫製業のうち婦人服製造業の従業員数は10年で約半分の2万6000人弱、事業所数は20年間で4分の1の約1450社まで減少した。事業所の9割は30人以下の工場といわれる。国内縫製業を取り巻く現状を考える際、統計の数字として衣料品の出荷額は5年前から3%まで落ち込んだ。輸入浸透率も97%超(数量ベース)を占めるという数字が一人歩きしているように思われる。婦人服縫製業の岩手モリヤの森奥信孝社長によると、出荷額は小売価格に換算すると衣料品市場での割合は高く、輸入浸透率も金額ベースで77%超と高付加価値品を中心とした国内生産の比率は4分の1近くあるとも言える。
デジタル化で成果
今回のアンケート調査では、7月に素材・製造・商社面に連載した「奮闘する国内工場/縫製業・ニッター調査から」でも示した通り、「現状と今後の課題」(複数回答)は、「人材確保」が56社と一番多かった。「労働条件の改善」39社、「技術継承」33社、「受注量の増加」32社、「新卒採用」26社、「設備投資」25社、「運転資金」16社、「後継者難」10社と続いた。