【連載】進化するオムニチャネル-②

2018/12/30 06:30 更新


■「モバイルでつながる」7割が購買

 EC売上高に占めるモバイル比率は、回答のあった企業の平均は70.7%と前年度から約8ポイント上昇した。ヤングレディスブランドを中心に、90%を超えた企業が前年の1社から7社に増えた。今やECへの購買のほぼ全てがスマートフォン起点。若い女性の間では商品やコーディネートの検索プラットフォームがインスタグラムなどのSNSへと移行、EC売り上げを確保するにはスマホ対応が必須というのがファッションECの共通認識だ。

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決済に高い関心

 SNSと連動して情報発信することで新規客の訪問回数を増やしたり、アプリを活用してウェブ接客や個客のデータ分析に役立てたりと、攻めのツールとしてもスマホ対応は重要だ。一方で、スマホは複数のウィンドウを表示する機能が不十分なため、操作性が良くなかったり、決済の煩わしさを感じさせれば離脱やカゴ落ちにつながりやすい。SNSから何となくサイトに流入する客も多く、「スマホECで増えた訪問客をいかにつなぎとめるか」という課題にも直面している。

 モバイル比率上位20社の多くが、前期のネット売り上げに貢献した施策と今期の重点施策に、「社内EC体制の整備」と「サイト利便性の向上」を選んだ。スマホに適したUI(ユーザーインターフェイス)の追求は不変のテーマだが、今期に限ってみると「決済方法の充実」が急浮上した。カード情報の入力など手間を省くことが欠かせないと考える企業が増えたためだ。ある大手SPA(製造小売業)ではEC売上高の3割が商品到着後にコンビニで決済できる後払い、1割が携帯電話の利用料金とまとめて口座振替できるキャリア決済となるなど、スマホに対応したメニューを充実させた成果が表れている。

スマホ個客に対応

 前期売り上げを伸ばした施策では20社中12社が「予約販売」と回答した。SNSで認知拡大→需要予測に役立ったと見られる。前期3位の「SNSとの連動」では次のステップとして、店頭の販売員によるコーディネート提案や商品紹介でコミュニケーションの密度を高めようとしており、客はさらに店とECの垣根なく買い物することが予想される。店とECの連動・同一サービスが求められ、そのために「物流改革」を今期の重点に挙げる企業が増えた。

 スマホECは、ユーザー自らブランドを検索して来訪することが多いデスクトップに比べてコンバージョン率が低いと考えられる。MA(マーケティングオートメーション)などもスマホアプリで分析した個客の行動とひもづけ、より快適に素早く購入できる工夫と、パーソナライズした「ウェブ接客」が重視されていることがわかる。

(繊研新聞本紙 2018年10月26日付)



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