【繊研新聞社創業75周年】元JAFIC理事長 廣内武さんに聞く 業界全体の団結が大事

2023/05/03 06:29 更新


廣内武さん

 オンワードグループのトップを長年務め、日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)理事長(09~18年)として「需要創造」と「市場拡大」に取り組んだ。長年の夢でもあった東京クリエイティブサロン(TCS)を実現し、実行委員会の会長として活躍している。

 ――JAFIC理事長就任はリーマンショック直後。

 世界的な景気悪化で不安もありました。経営が大変な時に、理事のみなさんの協力を得られたことに感謝しています。理事長としてはコアになるフィロソフィーとして「需要創造」と「市場拡大」を考え、業界全体の取り組みに発展させることを目指しました。

 ファッションビジネスは生活に潤いと彩りをもたらす生活文化産業であり、平和であってこそ成り立ちます。リーマンショックや東日本大震災など、何度も大きな危機に見舞われてきましたが、環境が大きく変動しても、産業の役割は変わらないでしょう。

 ――消費の変化は。

 日本の消費者は「高い品質」「高度な感性」「納得感のある価格」がニーズであり、付加価値の源泉でもあります。その根本にクリエイションがあり、これらを備えた商品開発を続け日本の消費者を攻略できれば、世界での成功につながるはずと考えてきました。

 ――業界全体の取り組みは。

 業界が団結して取り組むためには、縦軸だけでは限界があり、横串が大事と考え、百貨店や行政とも「百貨店で遊ぼう!」「ドレズアップメン」「プレミアムフライデー」「クールビズ」「ウォームビズ」などに取り組みました。クリエイションとマネジメントとの融合も重視し、デザイナーとアパレル企業を結び付ける「JAFICプラットフォーム」を創設し、産地企業とも連携も進めました。

 国産認証制度「Jクオリティー事業」創設にも携わりました。政府もクールジャパン推進機構(海外需要開拓支援機構)を13年に設立し、日本のファッションやクリエイションを世界に向けて打ち出し、JAFICも他の団体と協力して普及を進めました。

 ――人材の確保や育成も重視。

 若い人材が入ってこない、あるいは他産業への人材流出は大きな問題でした。「TOKYO新人デザイナーファッション大賞」への協力や、日本ファッション・ウィーク推進機構の産学連携など、若い人材の業界の入り口になる事業を支えてきました。小売業の労働時間短縮も大事な課題ですので、休日増や営業時間短縮もお願いしました。

 ――東京クリエイティブサロンが実現した。

 見本にしたミラノ・ファッションウィーク(フォーリサローネとミラノ国際家具見本市の総称)は、世界から約100万人の出展者やバイヤーが集まる一大イベントです。東京をパリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークと並ぶファッションの拠点にしようと、20年にスタートしました。今年4回目(3月17~31日)を迎え、本格的なイベントとして広がりを作っています。ファッションビジネスはモードの発信に始まり、ファッションに広がりスタイルとして定着することで産業として発展します。今後も業界に携わる人々が協力し、継続することで業界の発展につなげてほしいですね。

(繊研新聞本紙23年4月21日付)



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