友禅作家の四ツ井健氏は、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)のデジタルシステム「Tomonami」(トモナミ)と協業し、作品を制作した。東京・銀座の呉服店、銀座もとじ和染で1月21日まで開催中の個展で展示・販売している。
トモナミは、ソニーCSLのアレクシー・アンドレ研究員が「創造性の加速」をテーマに開発したソフトウェア。個々のアーティストに対してカスタムして提供する。アーティストの特徴を抽出してパラメータを設定、アーティストはパラメータを自律的に制御してアイデアを探索し、生成したイメージを画面に映し出す。創作過程における試行錯誤を高速化することで、クリエイションのスピード化を支援する。第1弾として昨年、陶芸作家の吉田幸央氏にシステム提供しており、四ツ井氏向けにカスタムした「トモナミ・フォー・ケン・ヨツイ」は第2弾となる。
四ツ井氏は、雲や山並み、高山に咲く可憐な草花をデッサンから抽出し、幾何学的なデザインに昇華することを得意とする。近年は「遠近法」をデザインに取り入れており、トモナミを活用することで、よりモダンに進化したきものや帯が完成した。純国産蚕品種「プラチナボーイ」の絹糸を使用した女性用訪問着は税込み120万円、同素材の名古屋帯49万8000円、男性用角帯21万8000円。作品は銀座もとじのECでも販売している。
銀座もとじの泉二啓太社長は、「デジタル技術と伝統技術は対極にあると思われがちだが、17世紀に始まった友禅も、当時としては先端技術だった。今回の取り組みは、デジタルと伝統が未来につながる化学反応を起こすのではと、我々もわくわくしている」と話している。