人の作ることに中途半端に口出しできないし、干渉もしたくない
服だけではなく、売り場も会社もデザインする。それが今のデザイナーには必要と川久保玲はいう。コムデギャルソンという会社をつくり、ビジネスをクリエーションする上で、さまざまなブランドを用意して、いろんな状況に対応する。
「ジュンヤ・ワタナベ」「トリコ・コムデギャルソン」といった実績のあるブランドだけでなく、「ガンリュウ」「ノワール・ケイニノミヤ」などの新しいブランドも着実に伸びている。社内でデザイナーたちは、どのように育ってくるのだろうか。
新しい物への追求
社内のブランドのスタートは、デザイナー本人が何かしらの意思表示をしてくるので確認をするというケースがほとんどです。皆、私が作るものと自分の作りたいものの間で、多分葛藤があり、乗り越えたいと考えるのではと思います。
クリエーションについては、それぞれの個性や考えで「自由に」というだけです。店作りの話とも共通しますが、会社という容れ物がしっかりあれば、その中でそれぞれのデザイナーが悩んでも、はみだしても、カバーできるというぐらいの気持ちでいます。
だから全く好きにやってもらいたいと考えています。人の作ることに中途半端に口出しできないし、干渉もしたくない。
コムデギャルソンらしさ
私がコムデギャルソンとしての冠=箱を作っていますので、デザイナーにはその中で自分の世界なりビジネスを作って欲しい。ただ、大きい箱の中にいるものですから、小さい自分のビジネスの箱を作るのがなかなか難しいこともあると思いますし、壁にぶつかることもあると思います。そこは私も引っ張っていかなければならない。
コムデギャルソンらしさから全く外れたブランドがあっても面白いと思っています。ただ、どうしてもコムデギャルソンらしさに近づいてしまう。それについてはちょっと大きな箱について考えないといけないのかもしれません。
デザインの面については、完全に任せています。数字が悪かったらチラっと困った顔はしますけど、特別にそれで慌てたりはしません。他のブランドでカバーしますから。
自由な立場に置かれるとかえって厳しいのではないですか。各自での解決を要求されますし。彼らは会社を構成するスタッフであるし、ともに会社を作っているメンバーです。一緒に頑張っていきたい。そういう存在です。
いかに売っていくか
服を作る人がビジネスも作れることがこれからは必要だと思います。作って売っていくところまでクリエーションと考えなければいけない。ビジネスという言葉だと硬いですけど、いかに売っていくか、どうアピールするかということを、服ができた後も考えるべきです。それもクリエーションですから。それを私は店づくりと言っています。
所得格差や環境の変化もあって、若い世代のファッションが保守的になっている。コムデギャルソンのように、常に新しいものを探すブランドは異質に見える。川久保玲に、今の市場の閉塞感や保守化はどう見えているのか。
社会が保守化し安定を求めると、新しい物への追求や創造の力が弱まり前に進めません。クリエーションの力、思考力が日本を強くする一つの柱だと思います。ファッションの世界から、強い気持ちを持ち、クリエーションの力を信じて努力、実行していきたいと思います。
(聞き手=小笠原拓郎)
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