あらためてAIとは何か① AIが注目されているわけ

2019/11/09 06:30 更新


【知・トレンド】《入門講座》あらためてAIとは何か① AIが注目されているわけ

 アベジャは、12年に創業したAI(人工知能)の社会実装に取り組む会社です。製造、物流などあらゆる業界でAIプラットフォームを提供し、小売流通企業向けには店舗解析サービス「アベジャ・インサイト・フォーリテイル」を、三陽商会やパルコ、ビームスなどの国内100社以上570店舗以上(19年4月現在)に導入しています。

 この連載では、これまで数多くのAI活用に取り組んだ私たちが、その知見を生かし、全10回でAIについて解説します。アパレルをはじめ小売流通企業の方向けにもイメージしやすいよう、技術的な詳細よりも大きな流れをお伝えする予定です。最初の2回では、「なぜAIが注目されているか?」「よく聞くディープラーニング(深層学習)とは?」といった疑問にお答えします。

 まず、なぜAIが話題になっているのか。それは、AIを機能させる環境が整ってきたことが影響しています。大量のデータを安価に保存するクラウド環境、さらに高度な計算機能を備えたモバイル端末・IoT(モノのインターネット)が普及したことで、簡単に大量のデータを取得・収集できるようになりました。しかし、データ量が膨大になると、人間のみで分析し処理することはできません。そこで、大量に集まったデータを分析し処理するAIに注目が集まりました。

大量に集まったデータを分析し処理するAIに注目が集まっている

 AIと聞くと、何でもできそうなイメージを持たれがちですが、基本的に「鉄腕アトム」や「ドラえもん」のような何でもできるAI、いわゆる「汎用型AI」は、存在しません。現在提供されているAIは、ある分野に限定すれば、人間よりも高い性能を出せる「特化型AI」です。例えば、人の年齢性別を推定するAI、製造工場で異常品を検知するAIなどが挙げられます。

 このような特化型AIも、データを学習する前は、生まれたばかりの赤ちゃんのようなもので、まだ何もすることができません。物を認識したり、状況を判断する、運動するなどなど、様々なことができるようになるためには、AIに目的に応じた正解となるデータを大量に人間が用意し、AIに学習させる必要があります。

 そして、AIが学習するための数ある手法の一つが、AIとセットで耳にする機会が増えたディープラーニングです。類似のアイデアは古くからありましたが、技術的な課題が大きく実現は困難とされてきました。しかし、12年に米国の著名な画像認識コンテストで、ディープラーニングを使ったチームが圧倒的な精度を叩き出して優勝したことがきっかけで、有望な学習手法としての脚光を浴びました。

 次回は、学習手法の一つであるディープラーニングの特徴と、今後の活用可能性についてご紹介します。

(伊藤久之アベジャ・インサイト・フォー・リテイル事業責任者/繊研新聞本紙19年6月24日付)



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