【新年号】柳井正氏「世界に伝わり始めた」

2014/01/04 09:00 更新


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布石から攻めへ。ファーストリテイリングの「ユニクロ」は、世界主要都市への進出を果たし、チェーン展開を始めた。服で人々の生活を変えるという新定義「ライフウエア」のもと、世界各地でリピーターを増やしている。今後力を入れるのは、各地のローカルニーズを反映したグローバル企画の精度を高めること。そのため、主要都市にR&D(研究開発)センターを設けていく。合わせて販売現場から本部までを貫くグローバル人材育成にいっそうの力を注ぐ。

 --13年はどんな1年でしたか。

 日常の仕事が全部グローバルに変わった1年でした。今までは掛け声だけでしたが、現実がそうなってきています。今日もトルコの人が来ていますし、昨日はアメリカの人、一昨日はインドの人と会っていました。毎日のテレビ会議でも海外とつながっています。今は、日本の人よりも、海外の人と話していることのほうが多いですね。

 --ユニクロの海外事業が成長エンジンになってきました。

 現状は全ての国で好調です。アジアでは全部の国で売れていますし、ヨーロッパも売れている。アメリカは絶好調です。中国では12年に反日問題がありましたが、回復は早かった。13年には現地のビジネス誌の調査で、全産業のベスト10に挙げられました。我々は日系企業ですが、中国の繊維産業に貢献したということが認められ、中国の成長とともに我々も成長したということです。

 --世界で売れ始めた理由は。

 グローバルブランドとして、新しい服を作り売っていくことが、多くの人に伝わり始めたのだと思います。これまで「メードフォーオール」とか、「ライフウエア」などの定義を掲げてきました。それが商品や店を通じて、本当に理解されるようになった。一度来店してファンになった人が、また来るという循環になってきたと思います。

 --今後どのような国、地域で伸びると考えますか。

 最大の市場はアジアでしょう。というよりもTPP(環太平洋経済連携協定)が始まって、アジア・環太平洋地域に一番の可能性が出てくると思います。(多店舗展開し始めた)西海岸のサンフランシスコといえばカナダに近いですし、今度ロサンゼルスに出店しますが、そうすればメキシコも近い。多分中南米には全部出ると思います。オーストラリアに出店すれば、当然ニュージーランドにも出ます。そのように次々とチェーン化していくと思います。もちろん最大の成長国は中国でしょう。

 --アメリカが中国に続く成長市場との見通しは。

 アメリカは、競争は激しいが豊かな市場です。今は赤字ですが、(他の国と比較しても)微差の範囲だと思います。あれだけ家賃の高い場所に出ているのだから、最初から黒字になるわけがない。むしろニューヨーク五番街に旗艦店があることが重要です。今後チェーン展開していく上で、現地企業を買収したり、優秀な人材を獲得していく上での投資と考えています。実際世界で売れている店のトップ5にアメリカの店が入っています。南米だけでなく、世界中の人がアメリカで買っている。黒字化は、郊外出店していく中で実現できると考えています。

 出店の要は、優秀な人材の獲得です。ラリー・マイヤーCEO(最高経営責任者)だけでなく、非常に優秀な経営者のチームができつつあります。我々は服屋で世界を変えていこうと言っている。新しい産業を作ろうと呼びかけている。こんな企業はどこにもないわけで、アメリカでハイテク企業がやろうとしているのと同様のものを、ユニクロに感じてもらっていると思います。

 


中国に続く成長市場と位置づけるアメリカ(「ユニクロ」ニューヨーク五番街店)


■世界の各地にR&Dセンター

 --今後、世界の隅々まで販売する商品をどのように企画していきますか。

 グローバル化するということは、ローカル化するということです。アメリカで店を展開していくなら、我々のDNAを持ちながら、アメリカ人が考える商品を作らなければならない。しかもアメリカで売れるだけでなく、世界で売れるものを作らなければなりません。それは他の地域でも同じことです。

 今までの商品開発は、どうしても日本の延長線上だった。これからは、日本、ニューヨーク、パリで、改めてR&Dセンターの機能を強化していきます。日本は日本人や中国人、韓国人などアジア人中心で、アメリカはアメリカ人、パリは欧州の人中心に、それぞれ現地の最優秀のスタッフが中心となって、地域ごとのニーズを拾います。

 ただその地域だけの限定商品を作るわけではありません。各地のニーズを掬い上げて、あくまで世界で売れる商品を考えていきます。その際、グループ企業の企画力を使っていくつもりです。まずは「セオリー」のR&Dセンターがあるニューヨークのミートパッキングプレイスで、「ユニクロ」も一緒に商品開発をやっていきます。「コントワー・デ・コトニエ」や「プリンセス・タム・タム」「Jブランド」ともやっていく。ロサンゼルスでは、ジーンズやTシャツのR&Dセンターを作るかもしれません。

 服には地域ごとに歴史と文化があって、そこの生活に根付いたファッションがあります。私はアメリカのトラッドが好きなんですが、中牟田久敬さんが書いた「トラディショナルファッション」(81年刊)という本を読むとよくわかります。トラッドの出発点はエディンバラなんです。イギリスのタータンチェックから始まって、アメリカの東海岸、西海岸まで伝わり、最後はボタンダウンまで行く。それが日本にも伝わり、これからは中国、アジアに行って、ぐるっと回って帰ってくる。

 そうした循環の中で、地域ごとのファッションが形作られています。これから我々がやっていくことは、日本のユニクロのDNAを持ちながら、グローバルで通用する現代のベーシックを作ることです。今後は、服としての完成度をもっともっと上げていきたい。だからR&Dセンターは世界各地で作っていきたいと考えています。

 


各地のニーズを組みながら世界で売れる商品作りを進める(「ユニクロ」春夏展示会)


■スタッフ1人ひとり人が主役

 --人材育成の重要性を強調されています。

 本部の人材も店長も同じグローバル人材という土俵で育成していきます。うちに10年以上働いていて、英語が身につけられない、外国人と接するのが嫌だという人は、残念だがローカルでやっていくしかない。我々は服で新しい産業を作ってきたのだし、世界的に見ればファッションは成長産業なんです。世界に出て行ける条件は整っている。なのに何で世界に出ていこうとしないのか。海外に出た結果、日本が1番合っていると帰ってきた社員もいますが、それも挑戦したからわかるのです。

 我々は日本のサービスを世界に輸出していきたいと思っています。アメリカに出店した時も、最初は日本式サービスができるわけないと言われましたが、今となってはユニクロで働くアメリカ人は皆日本式をやっています。

 --人材育成に力を入れる一方、”ブラック企業”との批判も受けています。

 物の見方の違いです。我々は限りなく白に近いグレー企業だと思っています。ものすごく厳しくサービス残業はさせないようにしているし、確かに仕事は厳しいかもしれないけど、それ以上の報酬やキャリアアップの道を用意しています。だから他のブラック企業と一緒にしてもらったら困ります。

 今後は、うちを第1志望にする人以外は採用しないようにしたいと思っています。銀行や証券会社と一緒に受けるような人では、うちみたいな厳しい企業だと務まらないでしょう。店長は非常に厳しい仕事で、僕は店長を経営者にしたいと本当に思っています。FCオーナーも、もっと増やしていきたい。できたら最終的に店長の20%くらいはFCオーナーにしたいと考えています。

 ”ブラック企業”叩きの時に、スターバックスコーポレーションのハワード・シュルツさん(最高経営責任者)と話していて、気づかされたことがありました。「あなたや私のように、世界を相手に活動するような恵まれた人は少ない。だから店長を主役にするだけでなく、現場のスタッフ1人1人を主役にしなくてはいけない」と。その人たちの生活をもっと良くする。希望を持って、自発的に店長になりたいと思える現場にしないといけない。仕事をする上で1番楽しいのは、自分で考えて自分で実行することでしょう。上からの言いなりにならずに、下からルールを破るくらいになって欲しい。そういう集団にしないと、世界の競争に勝てないということです。


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