日本繊維産業連盟(繊産連)は昨年7月、ILO(国際労働機関)駐日事務所と共同で「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」(企業行動ガイドライン)を公表した。そこでは、国際的にも注目される「責任ある企業行動」(レスポンシブル・ビジネス・コンダクト=RBC)の重要性を提起。RBCの中でも、昨今注目が高まる人権問題、特に労働問題に焦点を当てているのが特徴だ。RBCを実現するための手法である人権に関するデューデリジェンス(人権DD=人権侵害を特定・評価し、防止・低減策を行い、検証した上で、その内容を説明・情報開示すること)への取り組みを通じて、魅力ある日本の繊維・ファッション産業に向けた変革が進展している。
豊かに生き残るため必要な人権と環境
――今、人権DDへの意識が世界的に高まっている。
11年に国連において「ビジネスと人権に関する指導原則」が出されたことが契機となっています。それまでは多国籍企業における行動指針などをOECD(経済協力開発機構)が策定していましたが、国連の指導原則は行動指針を明確にして三つの原則を打ち出しました。
その内、トッププライオリティーは「人権を守る国家の義務」であり、次に「人権を守るのは企業の責任」としています。そして、これらを統合する項目として「救済措置」があります。これは、人権侵害に対する被害者の救済措置を国も企業も策定することを求めています。
ビジネスと人権を巡っては難しい課題があり、これをまとめ上げたのがハーバード大学ケネディスクール教授のジョン・ジェラルド・ラギー国連事務総長特別代表でした。それまでは、人権を巡る議論は南北対立(先進国政府・多国籍企業対途上国政府)の中でデッドロックに乗り上げていたのを、指導原則という、ある意味単純な哲学を提示することで対立を乗り越え、国連において全会一致の国際規範を作った点がラギー教授の功績と言えます。
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