【店長に役立つページ】コロナ下で健闘する地方・郊外店 常連客との深い信頼関係が強み

2021/05/06 06:29 更新


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 コロナ下で厳しい状況が続くアパレル業界だが、都心に比べ地方・郊外の店舗が健闘している。密になりにくい店舗環境や車で来店しやすい広い駐車場を完備しているなどのハード面はもちろんだが、日頃の対面販売の積み重ねによる顧客との信頼関係の深さによるところが大きい。大都市への移動が自粛傾向にある中、地元の商圏を見直す動きも追い風になっている。大手チェーンとは一線を画した地域密着のパーソナルな接客によって、新たなファンを広げるチャンスにもなり得る。

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地元と隣県の新規客が増加

ラージラブタウン(福島市)高橋義和ラージ社長

「スタッフのモチベーションの維持を最優先した」と高橋さん(ラージラブタウン)

 福島市郊外の約2400平方メートルの広い敷地にファミリー型セレクトショップ「ラージラブタウン」を構えるラージは、コロナ禍でも昨年秋冬以降、20年9月~21年2月の累計売り上げが前年実績を超えた。3月単月では中旬までで2ケタ増で推移している。厳しい市況でも健闘しているのは、「新規客の増加と、高単価品の動きの活発化が大きい」と高橋社長は分析する。

 昨年のコロナ下でも新規客は2ケタ増えた。同社のポイントカードの新規会員数は2400人となった。とくに隣県の山形県からの来店が際立った。さらには「福島県内の客が仙台や東京などの大都市に行けない分、地元の個店を見直す結果となった」とも。それには自動車で来店しやすい広い駐車場を完備した立地もプラスに働いた。

 常連客には毎月来店する客も多く、1回の客単価が上昇する傾向にあった。「働く男性などは飲み会がない分、高額な洋服を購入する比率が高まった」とみている。「これまで強みの対面販売でスタッフ全員で築き上げてきた常連客との信頼関係の深さも効果を発揮できた」と強調する。

 商品軸では19年秋に敷地内にアウトドア棟を新設したことで、キャンプブームを追い風に売り上げを伸ばした。その後、新棟にメンズとレディスのコーナーを設け、既存のメンズ棟をアメカジに絞り、レディス・キッズ棟をキッズ(アウトドア含む)に特化したことで「家族客の買い回りも高まった」。

 今までECをやらずに実店舗の売り上げだけで構成してきたが、コロナ下の新戦略として、4月にオンラインショップを開設する。一方、夏に県内の温泉リゾート地でキャンプ場の運営もスタートする予定。そこには「人と人のつながりが最大の魅力」との強い思いが込められている。

スタッフの人間力が客単価を伸ばす

プアコ MOMOテラス店(京都市)松村唯史店長

「なぜこの服があなたにとって価値を持つのか伝えられるように」と松村さん(プアコ MOMOテラス店)

 ミセス店を中心に35店運営するシンキが、若い年齢層を顧客ターゲットとする業態のプアコを開いたのは松村さんが入社した08年。大手アパレルのラグジュアリー郊外型ショッピングモールでは意外と少ない「スナイデル」や「ダブルスタンダードクロージング」など都会的でフェミニンなブランドを扱う。ブランド販売や販売代行店の運営経験のある松村さんは開店と同時に店長に就任した。同社では唯一の男性店長で、常にアンテナを巡らせ、ブランドやトレンドなどの新しい情報を他の店長に伝える役割も担う。

 入店している京都市伏見区のMOMOテラスも、例に漏れずコロナ禍での休業や営業時間短縮に見舞われたが、プアコの20年売り上げは前年を上回った。プアコでは来店者には必ず手書きのサンキューレターを出しているが、休業を強いられている間、松村さんは顧客に一度でなくできるだけ多く手紙を送った。手紙には服のことは触れず、近況を気遣う言葉でつづったという。「服を買いたいでなく、スタッフに会いたいと思われる」店であることを信念としているからだ。その成果か、緊急事態宣言明けの営業再開してすぐ顧客が殺到。しばらくは客数が通常時の倍、客単価も30%前後高い状態が続いた。

 松村さんがスタッフ教育で重視するのは人間力。人口減少が進むなか、今後客数が大きく増えることはない。客単価を伸ばすには価格志向ではなく、価値をきちんと伝えて売ること。そのためには客に信頼される存在でなければならない。商品やトレンドの知識以前に言葉遣いや所作などの販売マナーがきちんとできているかを強く意識させている。「良いものが売れるようになったと感じられる今だからこそ、しっかりと伝えられる人間であるべき」と松村さんは言う。

ジーンズ絶やさず信頼を獲得

マルカワ湘南店(神奈川県厚木市)岸亮太エリアマネージャー兼店長

「スタッフと一丸となってジーンズの提案を再強化した」という岸さん(マルカワ湘南店)

 厚木南インターチェンジに程近い、国道129号沿いにある「マルカワ」湘南店は、マルカワの売上高一番店。地上2層で売り場面積は約1155平方メートルの大型店だ。コロナ禍で前期(21年2月期)の売上高は若干落ち込んだものの、他店に比べると減収幅は小さく、客単価は前年実績を維持した。郊外立地という特性に支えられただけでなく、「ジーンズをはじめとしたボトムの販売を強化したことが奏効した」。

 ジーンズを豊富に揃えていることで認知されている同店は、親子三世代で買い物する姿が見られるなど、幅広い年齢層が訪れる。他店に比べて「父親が息子のジーンズを一緒に選び、購入していただく姿が目立つ」という。開店から約45年間、絶やさずにジーンズを販売し続けてきたことで、近隣住民だけでなく、神奈川県全域での信頼獲得につながっている。

 コロナ下で客数が減ってしまい、低単価の衣料や雑貨を高回転で売りづらくなった。そこで力を入れたのが、同店のなかで比較的単価の高い「エドウイン」などナショナルブランドのジーンズの提案だ。

 2階の売り場の約70%をボトムが占めるため、購入すべき商品に悩む客は多い。そうした客に対して親身に接することを心掛けた。「ジーンズが欲しければマルカワ湘南店へ」という認知が定着しているため、ジーンズの提案強化は効果的でもあった。こうした取り組みが実り、「ジーンズを3、4本まとめ買いしてくださるお客様も少なくなかった」。ジーンズを筆頭に年間1万本以上のボトムを販売し、前期のボトムの売上高は前年実績を維持した。

 「コロナ下でもジーンズの需要はある」と見て、同店では今後一層、ジーンズの販売を強化する方針だ。

服や会話で楽しい気持ちにする

ジェオグラフィー松井山手店(京都府八幡市)下垣利彦店長

「スタッフにアプローチ回数と買い上げ率を意識してもらうことで客数も増えている」と下垣さん(ジェオグラフィー松井山手店)

 「お客様をハッピーな気分にすることを強く意識した」と下垣店長。コロナ下でも、「笑顔を絶やさず、服や会話を楽しんでもらうことに改めて注力した」結果、この半年間の売り上げは前年比20%増の勢いだ。客数、客単価ともに前年を超えている。

 「ジェオグラフィー」はジーンズカジュアルを中心とした高感度セレクトショップ。今はSCにも店舗が複数あるが、もともとは郊外の路面店が中心だった。京都の高級住宅街にある松井山手店も、地域密着型の大型路面店としてオープンし、10年以上になる。

 下垣店長は20年8月に異動してきた。コロナの影響で集客が課題だったが、「まったくお客様が来ないわけじゃない。もう一度顧客のことを一番に考えて行動しよう」とスタッフの気持ちを切り替えた。笑顔で客を迎える声掛けの再確認から、もう一度全員で顧客作りに取り組んだ。

 接客は、「コロナで外出機会は減ったけど、新しい服で気持ちだけでも楽しくなってほしい」というスタンスを重視。試着を積極的に勧めるようにした。コロナという不安要素が社会や生活を変えた中、顧客が自らの気分を表現したい場面も増えた。「〝聞く〟という行為を今まで以上に大切にし、リラックスしてもらうこと」を目指した。これらを実践したところ、再来店や口コミによる来店が増え始めた。口コミで来る新規客の中には口コミ元の客とスタッフの名前まで共有して初来店する人もいた。

 スタッフには、顧客へのアプローチ回数と買い上げ率を意識してもらおうと、1日の振り返りと次の目標を記入するシートを提出してもらっている。この積み重ねも客数アップ効果を生み、売り上げ増につながった。

 東京と地方・郊外での消費動向が激変したと感じる。東京のファッションビル、百貨店、セレクトショップは厳しい状況が続くが、地方都市の専門店は常連客に支えられ、奮闘も目立つ。日頃から個性的な品揃えと対面販売でファンを作ってきたからこそ、ピンチをチャンスに変えられたのだろう。

 もともと地方は車社会で駐車場がある方が来店しやすい。さらにコロナ下で大都市への買い物を控えるようになったため、近県からの新規客も増えているという。地元住民も改めて自分たちが暮らしている街を見つめ直すことになり、新たな魅力を発見する機会になったのだろう。地元に〝行きつけ〟を作るのも楽しいかもしれない。

 (繊研新聞本紙21年3月29日付)

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