『欧vs米』ライフスタイル見比べ(宇佐美浩子)

2019/06/20 06:00 更新


先日、12年ぶりに来日したジョルジオ・アルマーニ。ブランド初のクルーズコレクションのランウェーショーを開催し、注目を集めた。

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さてアルマーニとシネマの関係は近しいと言っても過言ではない。これまでにも様々な作品のエンドロールにクレジットされていることを記憶している方も多いのでは。

とりわけ自身の思い出深い作品の一つ、ペドロ・アルモドバル監督の『ハイヒール』に登場したアルマーニの衣装は、今なお色鮮やかに脳裏を過ぎる。公開当時、スペイン語を学ぶなどスペイン文化と縁が深かったこともあり、幸いにも監督インタビュー実現できたことも重なっている。

参考までに、本作の音楽は坂本龍一が担当していた。

さてここで再びアルマーニと映画についてだが、かつて下記のようなコメントを目にしたことがある。

〝ファッションデザイナーになっていなかったら、映画監督になりたかった〟

氏のクリエーションの根底に、映画という文化が根を下ろしていることを知り、

映画を愛する者の一人として感動したことを憶えている。


というわけで今回の「CINEMATIC JOURNEY」は、「『欧vs米』ライフスタイル見比べ」をテーマに、前述のジョルジオ・アルマーニをはじめエトロやプラダ、トッズなど、名だたるブランドがクレジットされているイタリアンシネマ『家族にサルーテ! イスキア島は大騒動』からスタート!

「A CASA TUTTI BENE」(=「家ではみんな良い感じ」という意味)という、ちょっと皮肉を込めた原題から漂う言い知れぬ何かが本作の要であり、また本国では2018年最高の話題作として150万人以上の動員を誇る大ヒット作品とのこと。


アラン・ドロン主演の『太陽がいっぱい』ほか映画の舞台として、一方、名監督ルキノ・ヴィスコンティが愛したリゾート地として知られるイスキア島。

イタリアのナポリ湾に浮かぶこの島を舞台に繰り広げられる「ザ・イタリアンファミリー」感満載の物語は、上記画像のピエトロとアルバ夫妻の金婚式での出来事だ。


島に集まった親類一同総勢19人(+縁者1人)と共に、滞りなくお祝いの宴が終了するはずが、天候不良によりフェリーが欠航!

想定外の2晩を共に過ごすこととなり、それぞれに抱える人生模様からハプニングが勃発。

国籍問わず何処も同じ、見慣れた光景なのかもしれないと、笑いたくなるだろう!

巨匠フェリーニのミューズとして知られるサンドラ・ミーロ(下記画像左下)を筆頭に、イタリア映画界の様々なジェネレーションが登場する本作。登場人物に吹き込む温もりが魅力の監督ガブリエレ・ムッチーノ色が、美しい風景と共に鮮やかに目と心を包み込まれる。


『家族にサルーテ! イスキア島は大騒動』

6月21日よりBunkamuraル・シネマほかにて全国順次ロードショー

©2018 Lotus Production e 3 Marys Entertainment



イタリアの大女優が登場したところで、少しばかり往年のフレンチシネマに寄り道をしてみたく!


『巴里祭 4Kデジタルリマスター版』

©1933-TF1 DROITS AUDIOVISUELS

フランス映画界の『巨匠ルネ・クレール監督 生誕120周年記念』として4Kデジタル・リマスター版として2作『巴里祭』(上記画像)と『リラの門』(下記画像)がモノクロならではの魅力と共に、美しくよみがえった。

革命記念日(7月14日)前夜の出来事から始まるラブストーリー『巴里祭』は、1933年に初上映された初期の大ヒット作。

ヒロインを演じるアナベラ(上記画像)は、偶然にも革命記念日の生まれで、そのチャーミングなルックスから「翼をなくした天使」と称され、人気を博したという。

他方、1957年公開の『リラの門』は後期、監督の円熟期を代表する傑作との呼び声が高く、フランスとインドシナ(現ベトナム)の血をひくヒロイン「マリア」役、ダニー・カレルのエキゾチックな風貌が魅惑的。

またお人好しなヒーローと呼びたい主人公「ジュジュ」を演じるパリ生まれのピエール・ブラッスール。人間味あふれる役どころが印象的な彼の人生は、イタリアで幕を下ろしたと知り、勝手ながらのイメージと合致したように思うのは私だけ?!

ともあれ同時期公開の2作何れも舞台はパリの下町。その庶民ぽさが、公開当時の日本の観客にとっても親しみを増したとそうだ。

『リラの門 4Kデジタル・リマスター版』

©1956 ─ TF1 DROITS AUDIOVISUELS ─ RIZZOLI FILM ─ SECA

※上記2作同時に6月22日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開



「『欧vs米』ライフスタイル見比べ」をテーマにセレクションした「CINEMATIC JOURNEY」。

ゴールは今回のテーマそのものというべき、ニューヨークにおける欧米ライフスタイルに対する文化的差異と直面する『ニューヨーク 最高の訳あり物件』へ。

ドイツ出身の知性派シングルマザーのマリア(カッチャ・リーマン)と、10年前にマリアからニックを奪い、略奪婚を成し遂げたモデルにして、目下ファッションデザイナーとしてデビュー目前のジェイド(イングリッド・ボルゾ・ベルダル)。

だがこの二人は結果的に「共にニックと離婚」!

加えてニックが所有するマンハッタンの超ラグジュアリーなアパートメントがその慰謝料として、所有権の半分がマリアにあり、よって同居と権利争いが開幕する。

さらにまた、植物学を専攻するマリアの娘とその息子がドイツから訪れ、しばし4人のシェアハウスと化す。

果たしてどんなゴールが待っているのだろう?

監督はドイツ、ベルリン生まれのマルガレーテ・フォン・トロッタ。

社会派と呼ばれる彼女が挑んだ初コメディは、出演者もドイツ、ノルウェー、トルコなど多国籍。

ファッション、インテリア、アート、グルメ…キラキラとしたマンハッタン流ライフスタイルが満載の物語の進行に伴い「お金、成功、子供」について、ドイツ娘と共に観客も思考を重ねるかと思う。

そして最終的に彼女が下した結論に、自身を含め共感する方も多々おいででは?

もちろん人生の歩み方は人それぞれ。

正解はない。

だからこそ、本作の旨みがあると思っている。

『ニューヨーク 最高の訳あり物件』

6月29日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開

配給:ギャガ

©2017 Heimatfilm GmbH + Co KG

最後に少しばかり上記作品の舞台、ニューヨークという都市へのオマージュを表したフレグランスにまつわる、胸がキュンとする思い出をシェアさせていただきたく!

ライフスタイル誌の特集企画のため、本作の舞台にも似たラグジュアリーな物件や人々、ファッション、アート、音楽などなど、さまざまなシーンを網羅すべく現地を訪れたのは2008年、街が少しずつ活気を取り戻してきた頃だ。

様々なインタビューの中でも、忘れがたいひと時となったのが香水ブランド「ボンド・ナンバーナイン(Bond no.9 New York )」の創業者、ローリス・ラメ女史との時間。

フランス生まれ、ニューヨーク在住の彼女が、ノーホー地区にあるボンド・ストリート9番地にて幕をあけたラブストーリーは2003年のこと。つまりその地名がそのままブランド名となった。

発表直後、フレグランス史上初「一都市への愛と敬意を込めて創られたフレグランス・コレクション」として注目を集めた。

異なるエリアの表情が香りとなって表現されているのだが、中でも永遠のベストセラーとも称すべき「セント・オブ・ピース(平和の香り)」は、香りを通じて平和への警鐘を鳴らしながら寄付の継続を行っている実績が認められ、2015年にパフューマーとして初めて国連女性平和賞(UN WOMEN Peace Award)を受賞した。

彼女のニューヨークへの愛と平和への思いは、終わりのない物語だと思っている☆


宇佐美浩子の過去のレポートはこちらから

うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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