フレンチ&イタリアン・ローストな5月〈フレンチ編〉(宇佐美浩子)

2023/05/04 06:00 更新


「5月のイメージって?」

という問いに、世代や国籍によりそれぞれ連想するコトは異なるものの、1968年のちょうど今頃、パリの大学生たちによる五月革命(本国では通称「Mai 68」)のこと、「Egalité! Liberté! Sexualité! (平等!自由!セクシャリティ!)」をスローガンとしたゼネストが、ふと脳裏をよぎった。

そしてまた、ヌーベルバーグを代表する映画監督ジャン・リュック・ゴダールとリンクする。

そんなフレンチ・ムーブメントに端を発する5月。と同時にここ日本で、2001年にスタートし今年で23回目を迎えるイベント「イタリア映画祭」が5月2日より開催中だ。

そこで、今月の「CINEMATIC JOURNEY」は、「フレンチ&イタリアン・ローストな5月」と題して、深入りコーヒー気分なシネマをフィーチャー!

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先発はフレンチ・ロースト(笑)から。


「Happy!」な笑顔と共に香り立つ、美味しそうなお皿の数々。その名も『ウィ、シェフ!』

グローバルな顔ぶれの登場人物同様、バラエティに富んだ味わいを楽しめる本作には、多くの感動のスパイスが内包されている。

まず、シェフとして独立開業を目指すヒロイン役のオドレイ・ラミー。彼女は、ミシュラン一つ星を誇るレストラン2軒(「アピシウス」と「ディヴレック」)の素晴らしいシェフたちが腕をふるう厨房で、数カ月間の特訓。

また念願の「フランソワ・クリュゼとの共演」という夢を実現。

ちなみに彼は、クランクインのサッカーシーン撮影中に全治2カ月のアキレス腱断裂!なんとそのハンデが監督のアイデアにより役柄へ反映?

参考までに、実在するヒロインのモデルともいうべき社会活動を行う職業高校の教師(未成年の移民たちに職業適格証を取得させ、調理師として育成)カトリーヌ・グロージャン。カメオ出演する彼女はどのシーンに?


そんなこだわりがたくさん詰まった本作の監督、ルイ=ジュリアン・プティ。彼の下記のプロフェッショナリズムにはきっと誰もが脱帽するはず。

キャスティング・ディレクター撮影による300人のパリの移民支援施設で暮らす若者たちのインタビュー、300時間分のビデオ全てをチェック。

そして、1次選考後の150人の演劇ワークショップを経て、最終的に40人へと絞り込まれたとのこと。とはいえ、選考に漏れた若者たちにも、台本は渡さずエキストラでの参加のチャンスも…とのこと。


ウィ、シェフ!

5月5日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国ロードショー
© Odyssee Pictures - Apollo Films Distribution - France 3 Cinéma -Pictanovo - Elemiah- Charlie Films 2022

さて、前述のヒロイン同様、今という時代を象徴するフレンチ女優の一人にレア・セドゥの名が挙げられる。幅広い役柄に挑む中、ミア・ハンセン=ラブ監督の最新作『それでも私は生きていく』で演じた、(監督の実体験+冒頭のゴダールにも通じる何かが…)父の介護に奔走するシングルマザー役に、多くの賞賛が寄せられる。

そんな彼女が出演した(これまた筆者好みの)ウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブダペスト・ホテル』をはじめ、彼の作品に登場しそうな世界中から寄せられた被写体の数々が、まさに「CINEMATIC JOURNEY」気分に浸れる、東京・天王洲の寺田倉庫G1ビルで現在開催中の展覧会「ウェス・アンダーソンすぎる風景展 あなたのまわりは旅のヒントにあふれている」。本展もまた深入りコーヒーの味わいかな⁉

会場入口風景より

そして今、注目したいワードの一つに、前述のフレンチ・ロースト(?)系シネマのキャッチコピーにもなっていた「“おいしい”が未来を変える」だと思っている。

そんな一助を担っている食材にコーヒー豆栽培における「生産地への貢献」と、再生・循環への取り組みだと実感したのは、今年初めに訪れたサステナビリティ・コミュニケーションラボ「Re+Izm(リズム)」オープンでのこと。

ひょっとすると…「前述のシネマに出演していた若者の国籍のなかにも、当ラボで常時提供しているオリジナルブレンドコーヒー『The Bridge』の生産地があるのでは?」

一方、スペシャリティコーヒー専門店として知られる「堀口珈琲」。このほど、「Comae Coffee Civic Center~コーヒーで、つどう・まなぶ・むすぶ~」を新コンセプトに、リニューアルオープンした狛江店では、さりげなく学びの機会が隠れている。

たとえば、コーヒー抽出後のコーヒーの粉で作成したサインプレート(下記画像左)や、同じく左官材にコーヒー抽出後のコーヒー粉を混ぜ込みコーヒーの風合いが香るカウンター(下記画像右)は、勝手ながらフレンチ・ロースト気分かも。

「イタリアン・ロースト」へつづく


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うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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