フレンチ&イタリアン・ローストな5月〈イタリアン編〉(宇佐美浩子)

2023/05/18 06:00 更新


「フレンチ&イタリアン・ローストな5月」と題して、深入りコーヒー気分なシネマをフィーチャーしている今月の「CINEMATIC JOURNEY」。

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後半に当たるイタリアン編は、ここ日本でのイタリア映画祭のみならず、本国ではつい先ごろ、イタリアを代表する映画賞「第68回ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞」の発表も。

現在、ここ日本でも公開中の筆者推しの1作『帰れない山』が作品賞、脚色賞、撮影賞、音響賞受賞という快挙!

雄大な北イタリア、モンテ・ローザ山麓を舞台に描かれた本作の神髄とも称したい、人生哲学的側面を主演の二人、ルカ・マリネッリとアレッサンドロ・ボルギの競演で味わい深さをアップ。

とりわけマリネッリ(下記写真左)は2020年に公開になった『マーティン・エデン』以来、演技力に加え、5か国語(イタリア語、スペイン語、英語、フラン ス語、ドイツ語)を操るロマーノという点からも、イタリアン・ロースト的コク深さのある注目すべき俳優の一人だ。


『帰れない山』

新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほか全国公開中

© 2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV –PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A.

さてここで、今回のテーマにも掲げた「イタリアン・ロースト」にも関連する話題を少しばかり。

4月に本国で開催された、インテリア・デザイン業界のミラノコレクション的存在ともいうべきミラノ国際家具博覧会こと「ミラノサローネ(Salone del Mobile.Milano)」でも、革新的新作で毎回注目を集めるイタリアン・ブランド「Kartell」。

同じくイタリア代表するカフェブランド「イリーカフェ」が新しいパートナーシップを締結し、「新しい素材と持続可能な製造技術についての絶え間ない研究開発の一環として」およそ2年の歳月をかけ、廃棄されるコーヒーカプセルを椅子に変える製造過程を完成。

そして誕生したのが「Re-Chair Illy」。

デザインを手掛けたのは、当コラムにても先月クローズアップした「ブルガリ ホテル 東京」を含む「ブルガリ ホテルズ & リゾーツ」コレクションの設計デザインでも知られる、アントニオ・チッテリオだった。

Re-Chair Illy(リチェアイリー)/トーヨーキッチンスタイル

それではここで再び、イタリアン・ロースト的味わいのシネマ『マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究』の話題へ。


タイトルの「マゴーネ(Magone)」とは、北イタリアの方言で

❝夕日を見る時の胸を締めつけられるような感覚❞

なのだそう。

ムラーノ島にスタジオを構える唯一の日本人ガラス作家にして、大阪の辻調理師専門学校を卒業し、べネチアの名店「ハリーズ・バー」で調理師として働いた経歴を持つ主人公、土田康彦。

自作のガラス食器に、食のプロがもてなす心温まる手料理に、訪れたゲストは心身共にリラックス&リフレッシュしていく様がスクリーンを通じ、観る者にダイレクトに伝わってくるドキュメンタリー作品だ。


序章「FLOW」から始まり、第一章の「WALK」、「TASTE」、「PRAY」、「SPIRAL」、「FOG」そして最終章「SENUHIMA」へと進行し、タイトルの「マゴーネ」という感覚を各々共有することになるだろう。

監督のみならず、制作、撮影、編集、脚本も兼務する田邊アツシのモノローグで語られる物語の進行も、納得のイタリアン・ロースト的奥深さが伝わる。

ちなみに、第三章「PRAY」に登場する亡き妻の骨壷を探す映画監督、臺佳彦との出会いのくだりに、次に待ち受ける作品に通じる何かが…


『マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究』

6月9日(金)よりシネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開

そしていよいよ今月のフィナーレを飾る1作こそ、まさにシネマ界の「イタリアン・ロースト」的存在の監督、パオロ・タヴィアーニ(現在91才)。かつてタヴィアーニ兄弟として、多くの秀作を世に送り出していたのだが、兄ヴィットリオが2018年に他界。

そして待望の新作かつ、初のソロ監督を務めたのが本作『遺灰は語る』だ。

東京からスタートし、オンライン、そして6月の大阪へと続くイタリア映画祭2023オープニング作品として日本プレミア上映で、すでにご覧になった方もおいでかもしれませんが…

モノクロームの映像からカラーへ。

時にシニカルで、そしてユーモアも忘れない、人間味あふれる90分の「CINEMATIC JOURNEY」は、ローマから始まり、遺灰の主の故郷シチリアへと向かう…


『遺灰は語る』 

6月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

© Umberto Montiroli

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うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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