阪急うめだ本店「ハワイフェア」 人気の催事をオンラインのみで展開

2020/09/20 06:27 更新


《販売最前線》阪急うめだ本店「ハワイフェア」 人気の催事、オンラインのみで展開 ライブ配信で購買につなげる

 阪急うめだ本店は7月15~28日、人気の催事「ハワイフェア」をオンラインのみで実施した。新型コロナウイルス感染拡大防止のためイベントの自粛が続くなか、リアルでしか体験できなかったイベントをオンラインで実現できないかというのがきっかけだ。築き上げてきたハワイの人々や顧客との絆を維持したいとの思いもあった。合言葉は「今年はおうちでハワイ」。夏の恒例イベントの雰囲気を多様なライブ配信で演出して、オンラインショッピングにつなげた。阪急阪神百貨店は「リアル店舗の強みをOMO(オンラインとオフラインの融合)で拡張する営業スタイルの確立」(山口俊比古社長)を掲げている。その第一歩として、今回のオンラインイベントで多様な知見を獲得している。

(吉田勧)

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 「たくさんのローカルの人と触れ合えるリアルな体験が、阪急ならではの楽しさ。それをどう表現できるかでした」とハワイフェアを担当している澤田有里マーケティング1部9階企画・運営部マネージャー。毎回70~80人のハワイのショップオーナーやアーティストが参加している、リアルの催事の魅力を極力再現することにこだわった。飲食を楽しむことはできないけれど、現地ハワイの人とつながることはできる。そんな思いから、リアルで実施していたイベントを、現地とつないでユーチューブで連日ライブ配信することにした。

■〝ローカルの空気〟伝える

 「ロコのトレンドをお届け」「ハワイアンアートの魅力」「ハワイのカフェ時間」など期間中に6回実施したトークライブ(各回約70分)には延べ約40人が登場。ファッション、フード、ライフスタイルなどの各テーマで、ハワイのモノやコトの魅力を語った。「フラショー」や「ウクレレライブ」、ハワイの夕日が沈む様子をリアルタイムで配信する「サンセットタイムシェア」も実施した。ハワイに行きたくても行けない状況のなか、ライブ配信の視聴者からは「ハワイの空気を感じて癒やされた」という感想が多かった。サンセットライブも好評で「さすが阪急」との声も届いた。アップロードした動画は、開催から約1カ月経過しても視聴回数が増え続けている。

 期間中にワークショップも実施した。人数限定の有料で実施したヨガ、フラ、ロミロミのオンラインレッスンでは、オンラインの良さを実感することとなった。ウェブ会議ツールを活用したレッスンは、プライベートレッスンのように1対1の感覚で受けられることや、家で参加できる気軽さもあり、ヨガ、ロミロミはリアルの時よりも参加者が多かった。

ファッションをテーマにした第1回「ロコのトレンドをお届け」トークライブ。「リアルでやってきたから実現できた。今はとにかくハワイに行きたい」とハワイフェア担当の澤田マネージャー(右上)
ロミロミのワークショップの様子

ハワイのサンセットもリアルタイムで配信した


■購買行動はリアルと同様

 催事の最終目的は、モノの購買につなげることだ。19年のハワイフェアは1週間で約21万人を集客した。比較的新しい催事だが、すでに同店の催事売上高のトップ5に入るまでに成長している。もっとも、今回オンラインで販売した商品は「日本に入荷しているもの」に絞らざるを得なかった。テイクアウトもイートインもできないため、飲食関係も少ない。「リアル時の10分の1以下のブランド数」での販売となった。試着や商品に触れられないことは不利とみていたが、オンラインショッピングでも結果を出した。

 ファンが付いているアクセサリーブランドなど目的買いもあったものの、「その場で見て・知って・聞いて・買う」リアル催事同様の購買行動が多かったようだ。その代表例が比較的高額な原画が複数売れたことだ。アクサセリー、服、アート、食品など各ジャンルどれも同じぐらいの売り上げとなり、予算比5%増の売り上げを達成した。トークライブの効果とみている。

 観光産業が主軸のハワイの新型コロナウイルス感染症拡大の影響は大きい。ホテルの休業が続くなど日本よりも厳しい状況にある。今回のオンライン企画に対して、出展者から「日本で販売、PRできる機会を作ってくれて、本当にありがとう」などと感謝の言葉が寄せられている。

リアルで実施した19年のハワイフェアの様子(9階の祝祭広場)

■OMOへの第一歩

 「日本全国のハワイ好きの人に対する認知度を上げていきたい」と澤田さん。すでに次回の目標を描いている。詳細な客層分析はこれからだが、今回の購買客層はリアルと同じで「40~50代のハワイ好きが多い」とみている。リアル催事への支持がオンラインでも明確に表れた形だ。一方では、想定よりも「若年層の取り込みが弱く、ECにつながっていない」ことが課題だ。「インスタライブを使うなど、動画配信を客層によって変えてみるのはどうか」と次を見据えている。

 そのヒントが、5月にオンラインストア「阪急Eストアーズ」で実施した「ワールド・ティー・フェスティバル」にある。同催事もリアルの人気催事だがイベント自粛のため、急きょオンラインで販売することになったものだ。紅茶の入れ方、飲み方などのインスタグラムの動画を使用したものの、基本はイベントではなく「EC」の位置付けで実施した。リアル催事の購買客層は関西8割、ほか2割に対し、今回の購買客上位は大阪、兵庫、東京、神奈川の順で、関西とその他が半々となった。「SNSで話題になった」こともあり、購入客は47都道府県全ての地域に広がったという。

 次回のハワイフェアをOMO型にするかは、まだ決まってはいない。リアル催事の基本は1週間。それに対し、オンラインを活用することで「年中つながりができる。わくわくを1年間ためていくようなファン作りもできる。事前にやり取りができることで各種オーダーも可能かも」と澤田さん。すでに「妄想ハワイツアー」のアイデアがどんどん広がっている。「リアルの展開も変わってくるかもしれない」と話す。

(繊研新聞本紙20年8月21日付)

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