資生堂ビューティ・スクエア 原宿でメイクの楽しさを体感

2020/08/17 06:29 更新


《販売最前線》資生堂ビューティ・スクエア  原宿でメイクの楽しさを体感 新しい自分、発見を

 資生堂は6月、原宿駅前に開業した商業施設、ウィズ原宿の1階に、体験型の直営店「資生堂ビューティ・スクエア(Beauty Square)」を開いた。国内外の20代を中心とした若い世代がメイクアップの奥深さに触れたり、新しい自分を発見したりと、大人のおしゃれを楽しむカルチャースポットになりそうだ。原宿の散策を楽しむ延長で、気軽に入店・利用できるように工夫を凝らしている。

(須田渉美)

身軽さと多様性

 フロア面積は約792平方メートル。ガラス張りの入り口を入ると、開放的な間取りで化粧品の売り場が広がる。取り扱っているのは「シセイドウ」「ナーズ」「クレ・ド・ポーボーテ」など、百貨店の化粧品フロアで販売する資生堂のプレステージブランドだ。通常は独立した売り場での対面接客だが、ブランド間の垣根を取り払い、オープンスタイルの什器販売で、来店客が自由に行き来し商品を手に取れるようになっている。

 「銀座の直営店のようなカチッとした資生堂らしさではなく、身軽さが必要と考えた」と本多悟郎ビューティ・スクエアディレクター。機材などを入れるトランクケースの什器を間に入れ、天井にはしごを張り巡らすなど、ライブイベント風の空間演出でわくわく感を駆り立てる。通路に設置するトルソーには、アンバサダーに起用したきゃりーぱみゅぱみゅさんがキービジュアル撮影時に着用した色鮮やかなヘッドピースを展示し、通行客の好奇心をくすぐる。

 販売スタッフの制服は、デニムのサロペットに黒のシャツ。女性らしい品格ある制服を慣例とする資生堂では異例のカジュアルスタイルだが、原宿のストリートファッションに慣れ親しむ若者に目線を合わせたフレンドリーな装いだ。デザインは、レディー・ガガなど世界的なアーティストも来店している原宿の古着店、Dogのショップマネジャーに依頼。スタッフは、スニーカーやワークスタイルのブーツといった普段履きの一足を合わせ、サロペットをワンショルダーで着用したり、シャツをアウターとしたりと、二つのアイテムを思い思いに着こなす。もてなす側であっても、自分らしさや多様性を主張できるところが原宿らしい。

サロペットと黒シャツの制服を思い思いに着こなす販売スタッフ

 化粧品の売り場を超えたところには、インスタレーションのゾーンがある。4メートル四方のLEDのスクリーンがあり、映像と光、頭上のムービングライトが変化する幻想空間を体感でき、来店者参加型のデジタルコンテンツも実施。アバターソーシャルアプリ「ゼペット」を連動させており、登録している自分のアバターを投影して遊べる。きゃりーぱみゅぱみゅさんと協業したアバターとの記念撮影も可能だ。

きゃりーぱみゅぱみゅさんが着用したヘッドピース。季節に応じて変えており、例年は花火大会のピークを迎えるこの時期は、モダンなきものに花火を模したヘアスタイルで
オリジナルのコンテンツに自分のアバターを投影して楽しめる

 その周辺を囲う催事スペースでは、ファッション、ビューティー関連を中心とした3、4組のブランドが期間限定店を開く。ファッションカルチャーにアンテナを張った専門の担当者が、原宿を訪れる若者に響く国内外のブランドを厳選し、2週間前後の予定を組んで旬の話題を紹介している。

催事スペースではファッションブランドなどが期間限定店を開催。20代から熱い支持を得る「ルルムウ」など原宿を訪れる客層に響くブランドを誘致している

クイックで気軽

 非日常の〝体験〟を提供するのは、売り場の奥にあるサロンゾーン。ファッションショーのバックヤードを思わせるラフさを演出した、インダストリアルな空間だ。同時期にウィズ原宿の2階に開設した資生堂のヘアメイクアップアカデミー、SABFAを卒業したプロのアーティストが、一人ひとりの個性を引き出すメイクやヘアスタイリングを施す。一般的に「美容サロン」というと敷居の高さを感じてしまいがちだが、原宿を買い回りする若者のニーズを読んで「クイックで気軽に試せる」が特徴で、単価を抑えたメニューを揃えた。眉や前髪のカット、ヘアスタイリングなど20~30分の部分的な施術なら1800円だ。

フェンスの仕切りなど、イベントのバックヤードを思わせる演出で
店頭で扱うメイクアップ製品は一通り揃えている

 売り場で販売している資生堂の製品を一通り揃えて試せるようになっているが、メイクの楽しさを共有することに重きを置き、「普段使っている化粧品に何を加えると効果的に仕上がるか、ちょっとしたテクニックをアドバイスしている」ことも大きな魅力だ。

手持ちの化粧品でも、ブラシの使い方次第で仕上がりが変わるなどアーティストそれぞれの工夫やテクニックも教えてくれる

 「アーティストにプロデュースしてもらう時間を量り売りする」考え方で、対話を通じて悩みや要望に応えるフリーセッションは60分、90分、120分の3コースがある。料金は6000~1万2000円。パーソナルカラー診断を交え、顔立ち、髪や目の色といった個性を見極めながら、「持っている魅力が何なのか、新しい自分との出会いを体験してもらう」。

瞳や地毛の色など個性を把握しながらアドバイス

 このサロンの開業に伴い、面接して採用したアーティストはアシスタントを含めて6人。中にはインスタグラムのフォロワー数が4万人を超える有力アーティストも存在し、予約の際にオプションで指名することも可能だ。SABFAで腕を磨く若手にとっては、卒業後キャリアを積む中での選択肢となる。原宿という消費の表舞台を「自分を売り込む場として活用してもらいたい」と、人材育成に向けても可能性は広がる。

身近さを感じるコミュニケーションは胸に落ちるものがある

(繊研新聞本紙20年7月28日付)

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