【取材レポート】東レのDNA、イタリアに根付く

2023/12/13 14:00 更新有料会員限定


 東レグループの人工皮革メーカー、伊アルカンターラ(ミラノ)は、高品質・高感性なスエード調素材「アルカンターラ」で欧州をはじめとして高いブランド力を持つ。17年には350億円を投じた生産能力倍増計画を発表し、今も拡大の途上にある。今秋、ローマ郊外のネーラ・モントーロにある工場を海外メディアに公開した。50年以上の歴史を重ね、東レのDNAは着実にイタリアに根付いている。

(中村恵生)

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高級自動車内装で支持

 アルカンターラは東レが70年に開発したスエード調人工皮革を欧州で広げるため、72年に現地企業と合弁会社を設立したのが始まり。東レの特許技術である海島紡糸による原糸製造からニードルパンチ不織布の製造、ウレタン含浸、染色まで一貫体制で生産する。

ローマ郊外のネーラ・モントーロにある工場。田園風景の中になじむ

 現在は出資比率が東レ70%、三井物産30%の完全日系企業。13年には、日本製を「ウルトラスエード」(旧エクセーヌ)、イタリア製をアルカンターラとしてそれぞれグローバル展開するブランド戦略をスタートし、東レグループ傘下の二つの人工皮革ブランドで切磋琢磨(せっさたくま)し合う。

 アルカンターラが特に高く支持されてきたのが高級車を中心にした自動車内装分野だ。ランボルギーニ、BMW、アルファロメオ、マセラティなどそうそうたる高級車ブランドがカーシート、インストルメントパネルといった内装に使う。EV(電気自動車)化により、軽量性や動物福祉の観点で天然皮革から人工皮革に置き換える動きが強まっており、これも追い風になっている。

カスタマイズ・マニュファクチャリングを強化し、自動車メーカーとの取り組みが拡大

 高級感を感じさせる適度な反発感や滑らかな触り心地、美しく緻密(ちみつ)な表面などが評価され、自動車のほか、家具・インテリア、ファッションなどでも支持される。電子機器の加飾にも使われ、最近ではマイクロソフトの新型「サーフェスプロ」のキーボード面に採用された。

今年、日本の「ファセッタズム」(左)、「フミエタナカ」とも協業

究極のテーラーメイド

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