【連載】激変のヤング市場で闘う-4

2015/04/17 11:41 更新


《連載 アイデンティティーは何だ?~ヤング市場で闘う~④》

「最大公約数は当たらない」 ”正解求める世代”を攻める

 商業施設もヤングの消費の変調を感じ、対応を模索している。代表例は新宿のルミネエストだ。駅直結の好立地だが、全館売上高の3割を占める地下1階フロアが苦戦、13年10月から14年9月まで前年割れが続いた。しかし、10月、増収に転じた。

◇前年踏襲しない

 「不調になった要因で一番大きいのは、前年踏襲型のMDが通用しなくなったこと」と話すのはルミネエストの営業統括・フロアマスター統括の早川明希。これまでの世代とは異なる、今のヤング特有のマインドの芽生えをとらえ、それに刺さるアプローチの必要性を感じた。「SNS(交流サイト)の使用が当たり前になって、情報量が多い分商品をかなり吟味するようになった。(個性の強い商品よりも)コミュニティーの仲間に〝いいね〟と言われる商品を求める〝正解が欲しい世代〟」と分析する。

 ヤングに対し、こうすれば売れるという絶対的な策はまだ見えていない。今、そうしたものがあるのかも分からない。ただ、「変化は感じているので、我々やブランドはマイナーチェンジを繰り返すのではなく、新しいことを仕掛けて検証していかなければならない」と強調する。14年秋に復調したのも、ブランド側と話し込み、独自性のある商品の導入につなげた効果が大きい。売れ筋の焼き直しや追加によるものではない。

◇都市間格差の中

 「ヤングブランドが厳しいのは、ちゃんと市場に当たるものを提案できていないだけ」と話すのは、ラフォーレ原宿の業務推進部営業開発グループ長の柴谷健。同館に入る国内メーカーのヤングカジュアルブランドも多くが苦戦しているという。しかし、クロスカンパニーの「イーハイフンワールドギャラリー・ボンボン」は好調だ。14年8月~15年1月の同店の売上高は前年同期比26・9%増。好調の理由は、客を見つめたブランド開発にある。

周りの共感を得られる商品を求める世代と言われるヤング(東京ガールズコレクションのスナップから)
周りの共感を得られる商品を求める世代と言われるヤング(東京ガールズコレクションのスナップから)

 そもそも、同業態があるのは全国でラフォーレだけ。パステルカラーのガーリースタイルを揃え、既存のイーハイフンワールドギャラリーとは全くテイストが異なる。「都市間格差は広がっている。全国どこでも同じものを売ろうとしたって売れない」と柴谷。

 少子化を受け、客数維持のために間口を広げるブランドは多いが、ボンボンの手法は、その真逆だ。「なんとなく大きなターゲットを想定して、最大公約数を狙っても当たらない。他の大手ブランドはそれがずっと続いているだけ」と話す。

 渋谷109も変化の時だ。「価格訴求だけでは勝負できない。もの作りをしっかり行っているブランドも導入していく」と総支配人の中里研二。14年秋に導入した「リガレクト」の好調や、セール中でもプロパー品が売れる傾向は、高付加価値品へのニーズを象徴する。多様化するヤングに響くアプローチを探している。(敬称略)



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