《商社のクラウドファンディング活用広がる㊤》自社開発を消費者に問う

2021/05/04 06:29 更新


 商社はクラウドファンディング(CF)を活用した商品開発、マーケットリサーチを活発化している。新規性の高い商材を切り口にしながら、OEM・ODM(相手先ブランドによる設計・生産)のノウハウを生かす。開発製品の市場性を探りながら、CFで得られた知見をBtoB(企業間取引)での提案力強化につなげる狙いがある。CFの定着は、本生産に入る前に、開発製品の市場性を消費者に〝問う〟ことを可能にした。業界がサステイナブル(持続可能な)産業を目指すなかで、CFの特徴である先行予約販売や応援購入の形態は、〝無駄のない物作り〟実現へ新たな機能を発揮している。

(北川民夫/繊研新聞本紙21年3月10日付)

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 日鉄物産の繊維事業本部はこの間、相次いでCFに出品している。昨夏には、オリジナルのサステイナブル素材ブランド「エス」を使用したレディスTシャツをCF「マクアケ」で訴求。その後も抗菌薬剤「ナノファイン」を施した〝清潔ワンマイルウェア〟や、フィットネスブランド「アクトフォート」の開発した軽量・コンパクト・防臭抗菌機能を持つ「日常のジム通いに役立つ」トレーニングウェアを打ち出した。「オリジナル商材やブランドについては自社が最も理解している。これらをダイレクトに消費者に訴求して、そこで集約した声をOEM・ODMに還元していくことが狙い」という。

■目標額超える

 モリリンは、業務提携した韓国のTFJグローバルの非フッ素撥水(はっすい)加工「ブルーロジー」を使って、洗える制菌加工マスク「プロディ」を販売。新規事業室が20年4月から5月にCFで出資を募り、目標金額を大きく上回る約2600万円が集まった。繊維資材グループでは、CFでマーケティングを行う「エヴァーナイス」プロジェクトで「上質白Tシャツ」を提案してヒット。超長綿100%の生地を2枚使ったダブル仕立てで透け感を抑制したカットソートップ。これに液体汚れを付きにくくする撥水(はっすい)加工と、汚れても洗濯で容易に落ちるソイルリリース加工を施した。このほかリビンググループ、クリエイティブグループなど各部署でプロジェクトを立ち上げている。

 三井物産アイ・ファッションは「オリジナル性の高いブランド」によるファッション雑貨類のCFを5月から本格スタートする。「自社の商品の価値を消費者に問うためにCFを活用する」構え。「消費者と一緒にものを作り上げていくプロセスにしていきたい」としている。

■最先端が人気

 東レインターナショナルは自社製品ブランド「トレイン」を訴求する。昨年7月にオールラウンド型の高機能レインウェアのフィッシャーマンコートをマクアケで募集し、設定応援購入総額の約2倍の資金を集めた。耐久性の高い防水生地とシームテープ(縫い目に貼っているテープ)に、高度なシームシーリング技術を組み合わせたプロ仕様の製品だ。CF出品で「素材から縫製品まで手掛ける東レグループの一貫生産の強み」を発揮する。3月下旬には次のCFを計画しており、アスレジャー用途のフーデッドパーカとイージーパンツを打ち出す予定。「CF成功が最終ゴールではなく、メインビジネスのOEM(相手先ブランドによる生産)で、ブランドの商材を展開することが目的」と位置付ける。

 ユニチカトレーディングは、オリジナルタオル「洗うたびにふんわり・ふっくら。包まれる幸せがどんどん増えるふわもちタオル」をマクアケで提案中だ。4月16日まで支援を募るが、既に目標額を超える出資を得ており人気製品となっている。

日鉄物産は軽量・防臭抗菌などの機能性を持つフィットネスウェア「アクトフォート」を打ち出した


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