東京ブランドの24~25年秋冬メンズで、柔らかな輪郭のワードローブが目を引いた。ミリタリーやワークウェアのフォルムを残しながら、より軽やかに羽織る感覚のコートやブルゾンへと再構築されている。仕立て映えと気負いのない着心地の両立が配慮されている。
(須田渉美)
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「シュタイン」(浅川喜一郎)は、人と人が自由にコミュニケーションを取れる開放的な感覚を、エレガンスの表現に落とし込んだ。ミリタリーをベースにしたロング丈のコートは象徴アイテムの一つだが、異なる要素を差して女性的なニュアンスを加える。ブラックとベージュの二重織ウールでラペルの見え方に変化を出したり、袖やポケットを毛足の長いリアルファーで切り替えたり。落ち着いた印象で、艶っぽさのある男性像を感じさせる。
中に合わせるアイテムもフェミニンなムード。ラメ糸で2配色に仕上げたセーター、ハイゲージのシースルーカーディガンなど、秋冬の重厚なアウターに肩の力が抜けたスタイリングで新鮮味を出す。他にも、深いVネックのセーターや、深く開けたスキッパー襟のシャツなどを揃え、胸元の見せ方にリラックス感を添えた。
「イレニサ」(小林祐、安倍悠治)は、強みのテーラーリングの手法を応用しながら、ユニフォームを現代的なスーツ(揃い服)としてモダナイズさせた。モーターサイクルコートやバラクータなどのブリティッシュなムードのアウターは、ワークポケットをそぎ落とし、落ち感のあるへリンボーンを使ってエレガンスを引き出す。シンプルながら、肩の動きを配慮した独自のパターンで着心地は軽やか。メルトンのピーコートはミスト顔料加工を施し、ベージュから白へと変化するグラデーションによって柔らかなムードを強調する。
歴史的な洋服を現代のワードローブとして再解釈する「ベリーテイジ」(河合淳)は、40年代や50年代のアメリカンビンテージをベースに、柔らかで品のある印象へとアップデートさせた。特徴の一つはギャザーのディテール。シャツ袖やブルゾンのヨークに、欧州のクラシックスタイルに見られる細かなギャザーを取り入れ、さりげないドレープを作る。リバーシブルのブルゾンは、一方をレーヨン・シルクの生地にして光沢感を添え、もう一方はトーンを抑えたガンクラブチェックでソフトなエレガントを表現する。50年代のフランス軍に由来するミリタリージャケットも、手織りのようなスラブ感のあるコットン地を使って優しい雰囲気。肩のシームを背中にずらし、なだらかなシルエットに仕上げた。
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