【専門店】新旧ファッション個店が共存する桐生 魅力ある街へ着実に進化

2021/06/14 06:26 更新


 群馬県桐生市の中心市街地に新たな風が吹いている。近年、帰郷や移住してファッション小売店やライフスタイル店、飲食店を開業する若い世代が増えている。歴史ある有力店と新興・個性派店が共存する魅力的な街へと少しずつ変わり始めている。

エスティーカンパニー イベント仕掛け広域集客

 桐生の街でファッションの発信拠点となっているのが78年創業のエスティーカンパニーだ。18年春に桐生駅北側の末広町商店街から移転し、駅南東側の本町六丁目商店街に増床オープンした。

 移転前は新規客の来店が減りつつあり、「このままではじり貧になる。全国からわざわざ足を運びたくなる店を作り、街を活性化したい」(環敏夫社長)と考えた。その狙い通り、コロナ下の現在も関東地方だけでなく、他の地方からも客が訪れている。3月下旬から4月上旬にかけて行った3周年イベントにも多くの客が訪れた。

 3層の本館と2層の別館からなる売り場面積600平方メートルの桐生店は、古いビルをリノベーションしたもの。建築家の山本和豊氏に依頼し、内装や什器の細部までこだわった。

 一目見てみたくなる空間に加え、コロナ禍前から扱うブランドやデザイナー、地元店と協業イベントを積極的に仕掛け、顧客を楽しませてきたことが今に生きている。

 桐生店の20年8月~21年3月の売上高は前年同期を上回った。「コロナ下で顧客の来店頻度はやはり減ってしまっている。新規客の獲得に注力してこなければうちも苦しかったはず」と振り返る。「街や市が人を呼んでくれるわけじゃない。自身の店がしっかりと発信して人を集めることが、結果的に街おこしにつながる。お客様が来店したいと思える環境作りが大切」と助言を送る。

「エスティーカンパニー」桐生店の3周年イベントとして4月上旬に開いた「アンドワンダー」の期間限定店も好評だった

環社長

エアルーム コロナ禍も堅調に推移

 20年4月17日、群馬県に初の緊急事態宣言は発出されたその日、レディス主体のセレクトショップ「エアルーム」はオープンした。東武鉄道桐生線・新桐生駅から北東に延びる桜木町通りを10分ほど歩いた場所にある。

 新卒で大手セレクトショップに入社し約10年間、販売や生産管理などの業務を経験した新井克弥代表が、妻の結衣さんと店を切り盛りしている。

 克弥さんは桐生が地元で、「いつかは桐生で服屋を開き、地元に貢献したい思いがあった」という。コロナ禍での開業にためらいもあったが、「エスティーカンパニーなど、歴史のある店が予約制などで営業を続けると聞き、背中を押された」と話す。

 開店当初は近隣に暮らす地元客が多かったが、夏以降は前橋市や高崎市、栃木県や埼玉県からも客が訪れるようになり、現在は桐生市外からの客が8割を占める。

 20~30代の女性客が大半だが、一緒に来店する男性に対してメンズも順調に売れている。主体のレディスは「フォトコピュー」「カレンテージ」「ギャルリービー」、メンズは「アンフィル」「オーベット」などを扱う。レディスは他にないデザインで物作りに凝ったもの、メンズはシンプルながらも上質なものを揃えるように意識している。「ビュリー」などコスメやフレグランスも扱っており、それらを目掛けて来店する客もいる。

 4月からはキッズの販売も始めた。21~22年秋冬からは「マメ」の取り扱いが始まる。今後はレディスをより充実させ、22年春夏以降はメンズも強化する考えだ。

 「桐生はここ数年、新旧の店が入り混じる面白い街に変わってきた。この1年で服が好きな人がしっかりいることも分かったので、コロナが終息した後が楽しみ。桐生が群馬県内で最もおしゃれな街になれたら」と期待する。

新桐生駅から延びる桜木町通り沿いにある「エアルーム」

新井代表

(繊研新聞本紙21年4月22日付)

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