サンクリエーションが運営する東京・巣鴨のシニア女性向けセレクトショップ「えがお洋品店」は、19年春の開業以来、着実に成長している。主対象が50代のため、新型コロナウイルス下の外出自粛の影響を受けているものの、21年1~6月の売上高は前年同期比20%増となった。今年からはこれまで蓄積したノウハウを生かし、外部企業との協業やプロデュース・コンサルティング事業を強化している。「シニアレディスファッションの商流に携わる企業や消費者のつなぎ役を担い、物やサービスの情緒的価値の向上に貢献したい」(太田明良代表)という。
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同社は14年の設立。シニア・シルバー世代向けのフォトスタジオ「えがお写真館」から事業を開始した。その後、ヘアメイク、ヘアサロン、ネイルサロンなど、顧客の要望に寄り添いながらシニアビューティーを総合的に提案する企業として事業の多角化を進めた。えがお洋品店は、巣鴨地蔵通り商店街に面したビルの2階に、ヘアサロンとネイルサロンとの複合店として出店している。約215平方メートルの店舗面積のうち、約50平方メートルを同店が占める。
選択肢を増やしたい
えがお洋品店を始めた背景には、シニア女性のファッションを購入する店やジャンルの選択肢の少なさにある。高感度なデザイナーブランドに興味がありながらも、そうしたブランドを扱う売り場には若い女性が多く、「買い物がしづらい」という顧客の悩みをよく聞くそうだ。シニアレディスファッションを製造・販売・発信する企業の「シニアは〇〇を着ない、買わない」といった長年染みついた固定観念も問題視する。
そのため、えがお洋品店は「サイ」「アダワス」「シオタ」「ダル」など、ファッション感度の高い大手セレクトショップや個店専門店などで扱われている日本のブランドを中心に揃えており、それらを年齢という枠にとらわれず、シニア女性の日常着として提案している。
こうした斬新な提案が支持され、売り上げを伸ばしてきた。コロナ下以降、都外の顧客の来店は減ったものの、都心部への買い物を避ける都内の新規客が増え、増収につながった。
予約制接客に手応え
今夏に試験的に実施した予約制の特別接客サービスにも手応えを感じている。8月の4日間、1日4人を上限に、店を1時間貸し切った客が、ヘアメイクからスタイリング、写真撮影までを無償で受けられるサービス行った。撮影時に衣装として着用した服は購入する必要がなかったが、日頃体験できない特別なサービスが満足度を高め、客の多くが着用した服を購入した。通常営業時の客単価は約2万円だが、4日間は15万円になった。このサービスを軸にした予約制の新店舗を、早ければ年内にも巣鴨に出店する予定だ。
こうした実績が広まり、近年はファッションビジネスに関わる企業だけでなく、多方面から協業やプロデュース、コンサルティングの相談が増えているという。
今年から朝日新聞社の通信販売「朝日新聞ショップ」と、同社のBtoB(企業間取引)向けブランド「エガオ」で協業を始めた。5月にパンツ専業メーカーのARIKI(広島県福山市)が朝日新聞ショップで販売した商品では、広告のクリエイティブを監修した。ARIKIの商品サンプルは、えがお洋品店にも陳列した。7月からは商品監修も務めるようになり、朝日新聞ショップとえがお洋品店の双方で監修商品を販売するようになった。7月にスリーウェーカットソー(税込み9900円)、9月にブルゾン(同)を発売。11月にはダウンコート(1万9800円)を出す。
今後はシニアレディス向けの通販カタログの紙面プロデュースや商品監修なども手掛ける予定だ。
太田代表は、「シニアレディスファッションの川上、川中、川下企業、メディアと一致団結し、新しいイメージの発信、市場の裾野拡大に取り組んでいきたい」と話す。10月14日午後1時30分~午後3時には、東京ビッグサイトで開催される見本市「第92回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2021」のセミナープログラムで講師を務めた。シニア世代にターゲットを絞ったブランディングとネクストシニアを取り込む重要性について語った。
(繊研新聞本紙21年10月7日付)