リジェネレーションに向けた取り組みを日本で広げるには、どうすればいいのだろうか。IFOAM(国際有機農業運動連盟)世界理事の三好智子さんは、粘り強く伝えていくことの重要性を指摘する。
【関連記事】《サステイナビリティーのその先へ⑫》IFOAM世界理事 三好智子さん㊤ 昨日と違う明日をつくる
仲間は増えてきた
――日々深刻なデータに触れるにもかかわらず、ポジティブなのはなぜか。
現状を変えられると信じているからだと思う。リジェネレーションも可能だと思っている。実際、この数年で成功体験は増えてきている。
例えば、有機農業の分野で不耕起栽培という選択肢が当たり前に挙がることは、10年前には考えられなかった。少しずつではあるが、やってきたことは実になっている。もっと取り組みのスピードを上げなければという危機感はあるが、理解が広がり、仲間が増えていると感じている。
――日本で環境意識を高めるためには。
諦めずしつこく言い続けることだと思う。あとは、裏付けを取った正しい情報を集めて、伝えることだ。そうしたことを怠れば、古い情報だけを持ち出して説明したり、宗教っぽくなったり、攻撃的になってしまうことにもなるだろう。日本ではネガティブキャンペーンは有効ではなく、ハッピーな行動や良いことを推奨することが好まれる。
しかし、いいことをしたいと思っていても、自分が今していることがネガティブなインパクトを持っているということもある。皆を否定しないということは難しいが、小さなことからでも伝え、正しい現状把握につなげることが大切だ。
また、今まではアンチズムが原動力になっていた部分があるが、これからは相反する人たちと共同して作業する能力が必要になってくる。産官学連携などはその例だ。役割分担ではなく、どう共同するか、今は手探りしている最中ではないか。
仕組みを変える
――ファッション業界のリジェネレーションにはどんな取り組みがありうるか。
企業がイメージ戦略だけでエコやグリーンといった言葉を使い、実情は異なることも多い。消費者はそのことをしっかり見極めなくてはならない。
2次産業以降では、農業など1次産業のように直接的にリジェネレーションの取り組みをすることは難しい。しかし、2次産業以降でも、産業の仕組みを変えていくことはできると思う。
ファッション業界で言えば、ウールやシルクといった天然素材をできるだけリジェネラティブな由来のものに変えていったり、商品を自然にかえっていくようにデザインするといったことなどだ。できることはたくさんある。自分たちが作る商品がどうしたらリジェネラティブなものになるか考えることも有効だろう。
(聞き手=吉野光太朗)