村井の吉見工場 足を支えるシューパーツを一貫生産

2020/03/20 06:28 更新


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【ものづくり最前線】国産ルネサンス 村井吉見工場 足を支えるシューパーツを一貫生産 多様性と生産性を両立する改善の積み重ね

 日本製の品質を落とさずに、いかに生産性を上げるか――。1931年創業の村井は、靴作りに不可欠なシューパーツとフットケア製品を専門にするメーカーだ。ファッション用途からスポーツ用途、安全靴まで、あらゆる分野に対応し、一貫生産を強みに最適な形を作り上げてきた。埼玉県の吉見工場では、企画から研究開発、設計、サンプル制作、量産まで行う。新潟の子会社、津川インソールでは中底を量産する。限られた人材で、多品種少量生産を手際よく進めるチームワークも大事な要素だ。

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メーカーごと異なる規格

 靴メーカー向けのシューパーツ事業では、中底、アウトソール、カウンター、先芯のほか、靴を作るためのラスト、補強材なども生産する。ときには、取引先が意図するデザイン、機能を満たすように設計するなど、必要に応じた形にして供給できる対応力が、日本の靴メーカーに頼りにされる大きな強みだ。パーツを生産するための金型の製作も行う。

 「同業者が少なく、一般的な機械ではないので、自分たちでなんとかしないと、既存の設備ではできない、というケースが歴史的に多々ある」(村井隆社長)ことから、工場には製造に必要な工具や機械を作る作業場がある。多品種少量の生産は、使用する金型などを短時間で取り替えのできる機械が望ましく、すぐに修理できる体制も欠かせない。5人の技師が状況を見て改造、修理に応じたり、自ら設計した機械を製作したりと、現場に即してアイデアを試しながら生産活動を向上させてきた。 

カットした後の生地を巻き取る自動裁断機など、作業効率を高める設備を独自に作り出してきた

 作業現場には、生産設備だけでなく、メーカーごとに分けて保管する金型がずらり。現状のシューパーツ事業の取引先は192社で、今年1月の時点で、保管している中底の成型金型の数は1039型、フットベッドインソールとパッドの成型金型は1369型という。

 というのも、日本の靴作りは、百貨店や専門店向けの卸企業や靴の小売りが独自に企画し、その要望に沿って靴を設計しているので「靴型や部品が標準化されていない」煩雑さがある。特に造形的な多様性が問われる婦人靴は、1社でもブランドごとに異なる靴型を採用しており、トレンドによるモデルチェンジも頻繁にある。靴型によって部品は異なり、「そもそもアーチの長さが統一されていないのでシャンクも現状で422型が存在し、中底もいろんな形や素材を用意しないと対応できない。当社で作る95%は婦人靴向け」(金子新二取締役工場長)という。百貨店の靴売り場で、売れ筋の商品が在庫を積むほど売れていた時代はそれでも良かったが、今は多品種少量生産の時代。「様々なところに無駄が生じてコスト高になっているので、標準化は重要な課題」だ。

コンシューマー向けのフットケア事業では、昨年、ランニング用途のインソールでグッドデザイン賞を受賞。顧客ニーズに確実に応える積み重ねが、新たな市場を開拓するきっかけに

見える化して分析

 受注するシューパーツは多岐にわたり、それぞれ必要数と納期も異なる。気の遠くなる注文に的確かつスピーディーに対応できるよう、仕事を「見える化」して最善を尽くす。

 一つが「情報の二次加工」だ。生産管理の部署には、納期の日付で分類する差し立て用の棚がある。どのシューパーツをいつまでに作ればよいか、メーカーは異なっても素材や設備を共有したり、出荷の便を一緒にしたりするタイミングを踏まえて、「着工計画を作ること」が肝心だ。それによって、海外から仕入れる素材の在庫を柔軟に調整することもできる。

多品種少量生産を的確に管理するには納品書がセットされた差し立てが欠かせない

 もう一つが、手作業と機械生産を融合する作業工程の改善。生産性を考えると機械に置き換えたいが、そうはいかない。一例を上げると、先芯は、材料が薄く柔らかく、手すきの作業が必要になる。さらに、形状や材料、加工の仕様の種類が他の部品よりも多い。「多品種極少量」の生産は、機械だと生産コストが上がってしまい、「機械に金型をセットしている間に、手作業で終えてしまう」。その上、「メーカーごとに納品する状態が異なり、作業工程が一様ではない」という。

同じ素材のカウンターでも、メーカーによって納品する形が異なり、柔軟に工程を管理するには手作業が頼りになる

 作業チームでは、生産品目に応じてテーマを設け、目標値を達成できるよう、それぞれの工程にかかる時間の標準値を設定して分析する。例えば、自動裁断したカウンターを手すきする作業のラインと、梱包(こんぽう)台を隣り合わせにするレイアウト変更だ。歩行時間が6秒短くなり、1時間当たりの生産足数は15足近く向上。細かな改善を繰り返し、生産効率を高めている。

《チェクポイント》靴の要となるインソール

 一つの靴を構成するパーツは200以上に及ぶといわれ、内部の構造が美しい立体形状を保ち、履き心地に大きく関わる。甲革と裏地の間には、つま先部に「先芯」、かかと部に「カウンター」(月型芯)が入り、表革によってダブラー(補強布)も使う。足裏が直接当たる部分は「中敷き」、その下の「インソール」(中底)は、耐久性、吸湿性、耐摩耗性が要求される、靴の要の部分。その下には、足のふまずアーチの負荷を支える補強材「シャンク」(ふまず芯)、スポンジやコルクなどの「中物」が入る。地面に接するのが「アウトソール」(本底)だ。最近は、パンプスの付加価値として、屈曲性を高めたインソールの採用が進む。分野は異なるが、カーボンプレートを入れたソールのランニングシューズが競技記録を伸ばす要因になるなど、内部構造の研究開発は、消費を活性化する鍵となっている。

《記者メモ》品質を落とさない責任

  海外から仕入れる素材は、荷物が届く倉庫の入り口で全て検品する。インソールに使う新素材は、強度が自社基準に達しているか、試験室では10万回近くの屈曲テストを行っていた。接着剤の付き具合も試す。どんなに作業工程が多岐にわたっていても、確認作業に念を入れる姿勢が印象的だった。

 取引先のほとんどが「日本製」を掲げる以上、その商品には「確かで安定した品質」が期待されて当然であるし、品質の良さをなくしては、高単価な日本製の靴の強みは語れない。そこに重圧感もあるだろう。目を引くデザイン、革新的な機能は特徴を明確にする手段であって、品質を落とさない責任を果たすことが日本の企業が生き残るすべなのだと思った。

(須田渉美)

(繊研新聞本紙20年2月12日付)


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