2年ぶりにタイ・バンコクに出張している。外国人観光客がコロナ禍以前の水準近くまで戻りつつあり、街中では活気を感じる。しかし景気は決して良くないという。「非常に悪い」と話す企業トップもいる。
観光などが引っ張り、今年のGDP(国内総生産)の成長率は徐々に伸びてきたが、主要産業の自動車生産が前年よりも20%近く落ち込んでいるのが痛い。国内販売は金利の急上昇で自動車ローンが払えない人が続出。それを受けてローン審査が厳しくなり、「買いたくても買えない状態」という。自動車関連を柱にしている日系繊維企業は多く、影響を受けている。
ある商社は自動車関連に加え、メンテナンス用の塗料販売も苦戦する。生産が軟調なため部品工場などへの監査が減り、「床を塗り直してきれいに見せる必要がない」からだ。自動車産業の裾野の広さを感じる事例だ。
一方で健闘する企業もある。帝人フロンティアグループのテキスタイル製造拠点、ナムシリ・インターテックスは、アパレル向けで「自社でしか織れない」生地が大きく伸び、自動車関連の落ち込みを補っている。
落ち込み幅が大きく深刻なだけに嘆き節も聞かれるが、経営幹部の多くは歯を食いしばりながら「新しいことをやらねば」と前を向く。すぐに芽は出ないかもしれないが、そうした挑戦が次につながると信じたい。