《めてみみ》賃金アップがもたらすのは

2025/07/24 06:24 更新


 繊研新聞が4月に実施した「FB景況・消費見通しアンケート」では回答企業の約44%が「定昇+ベースアップ」を実施したと答えた。2年前と比べてその比率は高まっている。

 しかし企業の賃上げは物価高のスピードに追い付いていない。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」5月分を見ると実質賃金は今年に入り5カ月連続で減少、通年でも昨年まで3年連続でマイナスが続く。気になるのは給与総額の伸びの鈍化だ。〝賃上げ疲れ〟がでてきたのか、ただ一方で物価高は続く。このギャップが広がり、実質賃金がさらに下がるのではと心配だ。

 繊維と工業製品の商社、GSIクレオスはこの7年で6回賃上げした。吉永直明社長は「やってよかった」と話す。以前は賃上げを上回る成長が実現できるか自信が持てず、「後回しになっていた」。しかし思い切って決断したことが成長につながり、営業利益は7年前と比べて倍の水準にまで高まった。

 せめて競合他社と同水準の新卒初任給、賃金水準にしないと良い人材を確保、維持できない。しかし人件費増が収益を圧迫しないか、安定した成長を手に入れられるかと経営者は悩む。鶏が先か卵が先か悩むところだがインフレ下で求められる経営はデフレ下とは異なるはず。インフレ下で中・長期の成長を手に入れるには何が必要か。新たな経営手法が求められる。



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