あるチェーン専門店に聞いた話だ。店は都心のファッションビルから地方都市、郊外のSCまで幅広く出店している。年始から全店で冬セールを実施したのだが、24年は出店立地によって売れ行きに差が出たという。
暖冬で売れ行きが鈍かったアウターを思い切って値引きし、セールの目玉商品に据えた。郊外や地方都市の店舗ではこれが当たってよく売れた。家族で初売りを楽しむ客が多く、年明けのセール初日から来館客数が伸びたことが追い風になった。
一方、都心のターミナル立地店舗は、年末までは平日を含め、近隣で働く会社員やインバウンド(訪日外国人)でにぎわっていたのに、年始のセール初日以降は来館客数がぐんと減って、セール対象にしたアウターは1月中旬まで店頭に残ったままだった。
都心で働く人たちは年末に帰省し、その一部は地元で初売りに出かけたりもしたのだろう。インバウンドは都心でまず目当ての買い物を済ませた後、温泉など観光地に移動してのんびり年末年始を過ごしたのかもしれない。
値引き率も商品も同じだったのに、店の立地によって売れ行きに差が出た理由をこの専門店はこう分析する。コロナ禍前の日常が戻って服の需要も回復したが、人の移動も活発になった。セールは時期だけでなく、どこでどれだけ売るか、在庫配分も見直すべきなのかもしれない。