《めてみみ》椰子の実一つ

2022/06/08 06:24 更新


 愛知県渥美半島の突端にあるのが伊良湖岬。岬から広がる恋路ケ浜は「名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子(やし)の実一つ…」の歌で知られる。明治時代、民俗学者として名を成す柳田国男が学生時代に滞在した際、浜辺で椰子の実を見つけた。その話を友人の島崎藤村に伝え、後にこの話をベースに文豪島崎による名曲が誕生したようだ。

 地元の観光協会は、まちおこしに結び付けようと、「椰子の実流し」のイベントを30年以上にわたって続けている。沖縄・石垣島からプレートを付けた実を流すものだ。約1600キロ、流れ着くには2カ月近く掛かるという。これまで3500個近くを流し、4個が近くに漂着したが、恋路ケ浜には未着とのこと。

 時代は移り変わっても、見知らぬ遠い場所には、憧憬(しょうけい)や好奇心が伴うもの。やはり、日本のような極東の島国は海外へ雄飛せねば、発展していくことが難しい。少子高齢化の今後はなおさらである。

 コロナ禍もはや2年半。グローバルなビジネスを進めてきた企業にとっては、実地見聞ができず歯がゆい日々が続いた。ここにきて、ようやく海外出張も再開の機運。「来月、ベトナムに行けるようになりました」と喜ぶ顔も散見できるようになってきた。もちろん、ビジネスが優先だろうが、異国情緒を再発見する機会になるかもしれない。



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