「百貨店はコロナ前から消費者の価値観の変化に対応しきれていなかった。既存の百貨店の見直しだけでなく、新たな事業領域の確立なしに生き残るのは難しい」と話すのは大丸松坂屋百貨店の澤田太郎社長だ。コロナ禍に直面した20年9月にDX推進部を設置してデジタル戦略を加速、若手を中心に社内ベンチャー発足を促す。
その一環が、3月12日からスタートした衣料品のサブスクリプション(定額利用)サービス「アナザーアドレス」だ。目的の一つは持続可能なビジネスモデルの育成、確立。衣料品の成長を支えてきた大量生産・消費とその背景にある大量廃棄による環境問題に対し、持続可能なモデルへの転換を目指す。
もう一つはファッションに対する本質的な価値を見いだすことだ。再び、ファッションの持つ「人を元気にする、楽しくする力」を重視する。シェアリングなど所有や消費に対する意識の変化から、使い捨てにしないファッション体験を提供する。
日本の衣料品レンタル市場は新規参入が相次ぐが、「価格志向やスタイリストによる利便性の追求に偏っている」という。新サービスはハイエンドのインポートや日本のデザイナーブランドなどを扱う。百貨店の強みを生かした独自性と、外部企業と協業した持続可能な循環型モデルの構築で市場を開拓する狙いだ。