「今年は遅らせます」。大手セレクトショップの25年秋冬の展示会を取材していると、こんな声をよく聞く。ダウン入りのアウターや厚手のコートなど、本格的な冬物を店頭に投入するタイミングを例年より1~2カ月ずらすという。
実用品でなくトレンド性の高い服を売るセレクトショップは、実気温に先行してシーズン商品を提案する。先物買い需要を喚起する商売が主流だったが、24年は長引く残暑の影響が大きかった。10月も30度超えの夏日があったため秋物が動かず、11月後半~12月にようやく防寒アウターが売れ出し、プロパー販売期間は短くなった。
その反省を踏まえて、各社とも25年は最長で9月後半まで半袖など夏物の販売を継続し、秋物のウェートは減らす考えだ。冬物も「10月後半~11月にかけて、気温推移を見ながら徐々に投入する」店が多い。
防寒アウターも実需のピークが見込まれる1月はプロパー価格を維持して販売し、仮に売れ残っても「セールにはかけず、翌シーズンに持ち越す」という考えの店まである。
残暑と年内の暖冬が常態化した以上、こうした動きを取る小売店はセレクトに限らず今後も増える。シーズン商品を値引き販売する夏と冬のセール時期を含め、いつ何を売るのが適正なのか。改めて業界全体で新たなシーズンMDの在り方を議論すべきタイミングといえる。