全国的にはほとんど知られていないが、先週7月1日は「びわ湖の日」。この前後に滋賀県内全域では住民による湖岸や河川の清掃活動が行われ、関連イベントで地元の自然環境を見つめ直す機会が設けられる。
45年前のこの日、滋賀県で「富栄養化防止条例」が施行されたことに由来している。条例では工場などからの窒素・リンの排出を規制するだけでなく、リンを含む家庭用洗剤の使用・販売も禁止された。植物の栄養分である窒素・リンが琵琶湖に流入、プランクトンの増殖による水質の悪化が条例の背景にあった。
合成洗剤の洗浄力を上げる助剤としてリンは欠かせず、洗剤業界は猛反発した。だが、やがて酵素などを使った代替技術が開発され、リンは使われなくなる。80年代を経験した方は洗剤の「無リン」との記載を覚えているだろうか。発明協会の「戦後日本のイノベーション100選」の一つに花王「アタック」が選ばれているが、選出理由の一つに無リン化への挑戦が挙げられている。
ある製品の常識からすると、市場の要求は時に無茶なものに思える。当時の洗剤業界の受け止めはまさにそうだっただろう。今だと撥水(はっすい)素材や防水透湿素材の非フッ素化が近い。最大のネックは非フッ素化すると撥油性がなくなること。この無理難題に向き合った先に必ずイノベーションが生まれる。