《めてみみ》時代から逃れられない

2025/11/07 06:24 更新NEW!


 26年春夏デザイナーコレクションは女性らしさのモダンな表現が焦点となった。中でも、立体的なフォルムを日常に取り入れたスタイルが最も大きなトレンドとして浮上した。ボーンやペプラムで描く曲線的なディテール、クラフトテクニックを取り入れた造形美をデイリースタイルの中に収めるものだ。

 「昼のイブニングスタイル、一日中フィットするワードローブ」と、あるデザイナーは語った。デイリークチュールともいえるこのスタイルを見慣れると、昔ながらのいかにもイブニングですと主張するシルエットやアイテムがコンサバで古く見えてくる。造形的であっても、同時に現代のワードローブとしての軽やかさや動きやすさがなければ新鮮に見えない。

 先日行われた全国ファッションデザインコンテスト(主催=杉野学園、ドレスメーカー服飾教育振興会)の審査会でも似たようなことを感じた。いわゆるコンテスト映えを狙ったドレスが、日常生活から離れた「衣装」のようなイメージが強すぎて、たとえコンテストであっても新鮮に見えなくなった。

 オートクチュールの技術を持つ「シャネル」のようなブランドが、カットオフ(切りっぱなし)のディテールや古着のようなニュアンスを見せる時代。つくづく、ファッションは時代から逃れられないものだと気付かされる。



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