今年も長い夏がやってくる。気候変動による酷暑や暖冬など季節の変化が激しくなる中、アパレル業界ではシーズン区分や商品の中身を見直す動きが大きなうねりになっている。卸型のメンズブランドでも、商品構成はもちろん、展示会の開催回数を細分化したり、納品時期をずらしたりとシーズンMDの改革が始まっている。
4~6月を活性化
デザイナーの福薗英貴氏が手掛ける「ウィーウィル」は2年前から盛夏限定の商品企画を始動した。デザイナーブランドなどを扱うセレクトショップ店頭で、春夏物の消化が進み、品揃えが薄くなる4~6月に鮮度のある商品を投入し活性化するのが狙い。これまで春夏物と秋冬物の展示会だけだったが、長い夏対策として12月初旬に盛夏展を加えた。「シーズン区分も夏秋と冬春という捉え方の方が今の消費動向と合致する」と考える。
盛夏向け企画は22年に1ラックほどの少ない型数からスタートした。当初はイベント販売のような形で卸先を巡り、店頭での意見を共有した。盛夏企画が好評だったことから23年に型数を増やし、24年はさらに拡大した。
24年盛夏は、前回も手応えがあった落ち感のある「テンセル」混のシャツをはじめ、ガーゼ調のシャツ、織り柄の入った透ける素材のシャツが好評だった。ゆったりしたシルエットでテンセルデニムのジーンズや麻のヘリンボーンのリラックス感のあるセットアップも人気だった。シーズンテーマは旅で、リラックスしたスタイルで軽さや防しわ性などの機能も追求した。
綿や梳毛も生かす
24~25年秋冬物では、暖冬対策として、英「ジョンスメドレー」と協業した、海島綿のしっかりした肉感のモックネックセーターを出す。3シーズンなど長く着用できるアイテムとしてニットを充実する。カットソーアイテムは素材感や丈を変えながら通年企画として販売する。綿100%の長袖Tシャツからポリエステル混の半袖Tシャツまで揃える。
また、ウールを使ったスイングトップでは、紡毛ではなく梳毛を使用することで、綿よりも長く着られるようにした。
なお、暖冬とはいえ、冬の寒さは変わらないため、限られた防寒アウターでは暖かさを突き詰める。オーバーサイズのMA-1タイプのほか、表地の合繊に微起毛をかけたシンサレート中わた入りのスタンドブルゾンやベストも出す。
(大竹清臣)
【連載】《シーズンMDを見直すメンズブランド》