「マオタ」デザイナーの太田将昭さん 安定捨てブランド立ち上げ 糸からオリジナルで作る服

2021/02/23 06:27 更新


 21年春夏にデビューするユニセックスアパレルブランド「マオタ」。手掛けるのは糸からデザインまで全ての物作りを現場で学んできたデザイナーの太田将昭さんだ。外資企業での安定したポジションを捨て、「18歳からの夢だった」という自分のブランドを立ち上げ、成功に全力を注ぐ。

(森田雄也)

【関連記事】水泳が紡いだ新ブランド アキレスアンドセンチュリオCEOのヤスさん

物作りを動画配信

 マオタはシーズンに左右されずに着用できるウェアを提供する。ファーストコレクションで扱うのはジャケット4型、シャツ6型、パンツ4型、ショートパンツ2型。

 和紙糸を使ったり、高密度に織り上げたウール生地を採用したり。絣染めや有松・鳴海産地の絞り加工を施した服もある。「糸が始まり」とホームページにうたっているように、基本的にほとんどが糸からのオリジナルで、ファーストコレクションでは計16型に対して、11型の生地を用意する。

絣染めを施したヘビーウェートのリネンシャツ

 拠点であり繊維の産地である愛知県一宮市で糸、生地を作り、デザイナーブランドを得意とする岐阜の縫製工場、サンワークで生産する。物作りは糸から製品までトレースが可能。予約注文のみに対応し、注文されたものだけを生産する在庫レスの形でサステイナブル(持続可能)な物作りを心掛ける。卸販売は考えていない。

 手間がかかっている分、商品は高価。ウールジャケットで6万6000円、鳴海絞りの手染めシャツだと11万9000円する。自社ECサイトでオーダーを募り、多くがオーダー後に糸から作るので、納品まで最大6カ月。早くても4カ月を要する。

 だから、購入者に対して物作りの過程を動画配信するサービスを提供していく。「待っている間も楽しみな時間にしてもらう」のが狙いだ。物作りの手間を見てもらい、製品と価格に対する理解を促すメッセージでもある。

 売り上げの目標は決めていないが、「ある程度の規模までは大きくしたい」と太田さん。だが、売り上げを追うのではなく「今はテスト期間中」と考え、こだわった物作りの軸を維持しながら、自分が作りたい服の追求を最優先する。

物作りの過程を動画撮影し購入者に届けるサービスも計画している

夢を追うために帰国

 太田さんは多彩な経歴の持ち主。文化服装学院を卒業後、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションに4年間留学。デザインを生む前段の哲学や概念について学んだ。

 帰国後、志望していた「ヨウジヤマモト」に入り、パタンナーとしてデザインや縫製もこなしながら4年働いた。将来的に独立して自分のブランドを持ちたいと考えていたが、「素材の知識が足りない」と思い、テキスタイルメーカーの国島(旧中外国島)に転職。海外営業部に配属され、テキスタイルの輸出業務に携わった。

 8年ほど勤めたころに、デザイン力、語学力を買われアディダスに転職した。東京で2年、米国で1年勤めたころ、ふと自分を振り返る機会があった。「18歳のころ、ブランドを立ち上げたいって言っていた夢を全くかなえられてない」

 アパレル製品を大量生産、販売して結果的に在庫を残してしまう現代のビジネス構造に疑問を抱いていた時期でもあった。それが自分のストレスにもなり、フラストレーションにもつながっているのを心の片隅で感じていた。

 当時の役職はシニアデザイナー。次はディレクターを目指すという道もあった。給料も大台を超えており、生活に不自由はない。だが、夢のために思い切って退社。帰国し、拠点を愛知県一宮市に移した。

 1年かけて、ブランドを立ち上げる準備をした。SNSにも力を入れ、インスタグラムのアカウントはブランドリリース前にもかかわらず、既に2000人近いフォロワーが集まるなど、足場固めをしてきた。

 ネットやSNS担当で、妻の太田ティートベールアリサさんと二人三脚で成功を目指す。

「良い物作りをして、シーズンレスで長く着てもらえるような服を提供したい」と話す

(繊研新聞本紙21年1月18日付)



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事