半年振りにテラス営業が再開したベルリン。冷夏でも満席に(宮沢香奈)

2021/05/27 06:00 更新


夜の9時まで明るい最高の季節がやってきた!!通常ならこうなるはずの5月のベルリン、今年は例年にない低気温と雨季のような天気が続いている。そんな残念な天候の中、5月21日からテラス席に限り、レストランなどの飲食店が営業再開されることとなった。昨年11月からロックダウンが始まって以来、約半年振りの営業再開とあって喜びの声も多い。しかし、野外にあるテラスであっても着席するにはコロナウイルスに感染していないという陰性証明が必要という新たなルールが課せられた。当然ながらマスクも必要であり、FFP2マスクの着用が義務付けられている。

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ようやくベルリンの日常の風景であるテラス席が開放された。

飲食店においては、これまでも持ち帰り限定での営業は許可されていたこともあり、事前にコロナテストを受けて、さらに予約をしなくてはならないといった手間を考えると、思い立った時に直接オーダーしに行けるテイクアウトを利用し、近くの公園や家で食べた方が良いと考える人も多いだろう。それ以前に、長引くロックダウン生活ではフードデリバリーの需要が高まっており、ドイツ発の”Lieferando”やフィンランド発の”Wolt”を活用している人が多く見られた。

衣類やその他の小売店に関しては、”Click & Meet”と呼ばれる事前予約で限られた時間内での買い物が許可されていたところから、陰性証明の提示が追加された。小さな個人店であっても必要であり、一体誰がそこまでしてショッピングに行くのだろう?と疑問に思っていたが、店舗の入り口付近にはカウンターが設置され、スタッフが対応に追われている姿が日常となった。H&Mやユニクロといった人気ファストブランドやデパート前には行列が出来るといった光景も今では普通となっている。


ショッピングやレストランへの入店には、”Schnelltest”と呼ばれる陰性証明の提示が必要となっており、メールに送られてきた証明をスマホで見せるか、プリントアウトした用紙を提示する。週1回は無料で検査可能。

店舗のエントランスにて予約の確認も行う決まりとなっている。(*rbb参照)

食事はテイクアウトではなく、店の雰囲気や風景を楽しみながらその場で食べたい。洋服はオンラインではなく、直接手に取って素材やデザインを確認してから購入したい。コロナ禍であってもこの考えがずっと変わらない私にとって、多少面倒ではあるけれど、陰性証明さえあれば入店できるというルールになってくれただけでも良かったと思うべきだろう。もとからリモートワークの私にとって、レストランでの食事とリアル店舗でのショッピングは、ストレス発散であり、息抜きであり、とても貴重な時間なのだ。同じ考えを持つ人が多数いることを証明するように、営業再開となった5月21日は多くのレストランやバーが満席となり、飲食店で働く友人たちからも終日あり得ない忙しさだったと報告を得ている。

衣類などを扱うフリーマーケットの再開はされていないが、フードマーケットはロックダウン中も至るところで開催されている。世界各地のソウルフードが楽しめるフードマーケットに毎週出店している日本のたこ焼き屋。

天気が良ければ外で食事を楽しめる季節がやってきた。

ロックダウンが長引けば長引くほど、人々の鬱憤は溜まり、疑念が高まり、デモが頻繁に行われ、激しさも増していった。5月1日のメーデーは「労働者の日」であり、ここぞとばかりにベルリナーが暴れ出すのでは?と思っていたが、これまでに見たことのない警察の動員数と圧力により、デモ行進はワンブロックしか出来なかったと聞いた。過去最高に静かなメーデーを目の当たりにしたが、それでも、人々は外に出て、権利を訴え、公園では音楽をかけて楽しむ人たちで溢れ返った。久しぶりに見たベルリンらしい街の光景である。

バルコニーでプレイするDJの音に合わせてストリートのゴミ箱の上で踊る通行人。警察も注意しないのがベルリン流。
道路上で車が燃やされるという毎年恒例の風景が見れなかった代わりに、ゴミ箱が燃やされていた。

デモによる民主主義の訴えがどれほど功を奏するのか分からない。しかし、メーデーを境にベルリンの街は少しずつ変化していった。このまま制限解除された状態が続き、美しいサマーシーズンを堪能することができることを願う。そして、様々な意見が飛び交う中でのワクチン接種が強制にならないことを願うばかりである。

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長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



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