初夏の陽気を味わいながらアートイベント「Gallery Weekend Berlin」を巡る(宮沢香奈)

2025/05/26 06:00 更新NEW!


 公式日程では、5月2日から5日の4日間にかけて「Gallery Weekend Berlin」が開催された。毎年9月に開催される「Berlin Art Week」に次いで大規模なアートイベントとして認知されており、ミュージアムやギャラリー、イベントスペースなど、ベルリンの至るところで展覧会やアートインスタレーション、イベントが行われる。

≫≫宮沢香奈の過去のレポートはこちらから

 毎日届くインビテーションを確認するだけでもかなりの時間を要した。それだけでもベルリンのアートシーンが盛り上がっていることを実感できる。すでに4月末から関連イベントやプレスプレビューが開催されていたが、オープン前から話題になっていた「Pace」のオープニングパーティーを一番の目的に可能な範囲でエキシビジョンを周遊した。

 オープニングには多くの関係者がお祝いに駆け付け、翌日の一般公開の初日にはエントランス前に長蛇の列ができたほど。オープニングパーティーが開催された5月1日はメーデーと呼ばれる「労働者の祭典」の祝日と重なったが、クロイツベルク地区周辺では「Myfest」と題された街中がパーティー会場と化すカオスな祭りが開催された。この祭りもベルリンの風物詩として毎年恒例となっている。

 初夏の陽気に恵まれたこの日は、公園でBBQやピクニックを楽しむ人で溢れ返り、一部のギャラリーやイベントスペースではアート鑑賞を楽しむ人で溢れ返るという興味深い1日となった。

 「Pace」は、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、東京、香港、ソウル、ジュネーブに拠点を構える世界的なギャラリースペースとして知られている。8拠点目となるベルリンはシェーネベルク地区に位置する50年代に建設されたガソリンスタンドの跡地を再利用している。

 同ギャラリーは「Galerie Judin」との共同運営によるもので、オフィス、新聞社Die Zeitのカフェ、ショップなどが併設されている。旧東ドイツ時代の建築デザインをそのまま活かした空間は、レトロな雰囲気の外観と真っ白な壁にアンティーク家具で構成されたモダンな内装とのバランスが見事。

 オープニングを飾ったのは、フィンランド出身のアーティストTom of Finlandと2階の展示スペースにて、Jean-Michel Basquiat、フランス出身の画家・彫刻家で1900年代に活躍したJean Dubuffet、アメリカ拠点に活躍する新世代アーティストを代表するRobert Navaの3組のグループ展。Tom of Finlandは、1950年〜80年代に活躍したアーティストで、91年に死去しているが、ゲイカルチャーやLGBTQ+アートにおける重要人物として知られている。マッチョでセクシャルな描写の作品が多く、昔のアメリカンコミックを彷彿させるドローイングが印象的だった。

 個人的にはバスキア目当てで訪れたが、70年代、80年代の若き頃の作品が中心で、トレードマークのサインが入っていないとバスキアだと分からない作品もあった。それでもバスキアの原画を間近で観れ、希少価値の高い初期の作品を知れたことが嬉しかった。

 「Pace」の美しいガーデンの池には鯉が泳いでいて和の雰囲気も感じられ、都会の真ん中に位置しながら居心地が良く、カフェだけでも利用したいと思った。

 ベルリン有数のコンテンポラリーギャラリーのひとつ「König」とレストラン、バー、イベントスペースを運営する複合施設「TELEGRAPHENAMT」との共同プロジェクトによるエキシビジョンは、3つのスペースに分けて彫刻家のJulia Beliaevaの個展や塩田千春をはじめとする著名作家のグループ展なそが開催された。多数の作品を一度に観れただけでなく、19世紀に建設された旧帝国通信庁を改装したラグジュアリーな歴史的建築が素晴らしく、ここにも改めて訪れたいと思った。

 他にも街を歩いているだけで、エキシビジョンやイベントを開催しているギャラリーやスペースを発見し、どこも盛り上がりを見せていた。「Gallery Weekend Berlin」終了後も興味深いエキシビジョンを開催しているギャラリーやミュージアムが多数あり、アートに触れたいと思ったら常に選択肢が豊富にあることを実感した。今後もベルリンのアートシーンを追っていきたいと思う。

≫≫宮沢香奈の過去のレポートはこちらから

長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



この記事に関連する記事