1月18日から20日の3日間に渡り、ベルリン・クロイツベルク地区に位置する「Kühlhaus」を会場に、トレードショー「THE UNION」が開催された。本展はヨーロッパや日本をはじめ世界各地のブランドが集結し、欧州および北欧市場での拡大や新規開拓を目的とした、BtoB向けの合同展示会。毎年夏と冬の年2回開催されており、今年最初の開催となった今回は80ブランドが出展した。
会場となった「Kühlhaus」は本展の定番会場として知られているが、もとは20世紀初頭(1900年前後)に建設された食料用冷蔵倉庫で、かつてはヨーロッパ最大級の冷蔵倉庫の一つとして稼働していた歴史を持つ。近年はイベントや展示会に加え、昨年から本格的なクラシックコンサートなどの音楽イベントも行われるなど、文化施設としての存在感を高めている。
「THE UNION」の大きな特徴は、長い歴史や伝統、クラフツマンシップを重んじるヘリテージブランドが数多く出展している点にある。会場にはセルビッチデニム、レザージャケット、ワークウェア、ミリタリーウェア、シルバージュエリー、ブーツ、テキスタイルサンプルなど、トレンドに左右されないクラシックなアイテムが並んだ。
長野県千曲市を拠点とする「THE FLAT HEAD」は、ロカビリー文化に着想を得たレトロアメリカンスタイルを代表するブランドで、「THE UNION」の常連。“メイド・イン・ジャパン”にこだわった高品質と卓越した職人技を強みに、ドイツをはじめとするヨーロッパ各地で展開を広げている。筆者の地元である長野県に、こうした老舗ヘリテージブランドが存在していたことを知らなかっただけに、ベルリンという異国の地で実物に触れられたことは嬉しい体験だった。
なかでも、希少なヴィンテージを思わせる佇まいを持つ、上質かつデザイン性の高いスカジャンが強く印象に残った。ノンウォッシュやワンオッシュのインディゴジーンズを履き込み、エイジングさせた状態でカラフルなスカジャンを合わせたコーディネートをしてみたいと思った。希少価値の高いヴィンテージ古着も良いが人気と値段高騰が止まらない現状を見ていると、高品質でデザイン性の高い日本製をヴィンテージのように着こなすことに価値があると感じた。実際にドイツでは日本の職人技術へのリスペクトが強く、特にデニムやクラフトに定評がある。
同系色のグラデーションでさりげなくカモフラージュ柄を施したダウンジャケットや、Leeとのコラボレーションによる珍しいカラーのデニムシリーズなど、他では見られないアイテムを展開していたのが、イギリス発の「Nigel Cabourn(ナイジェル・ケーボン)」だ。ヴィンテージのミリタリーやアウトドアウェアのコレクターとしても知られるイギリス人デザイナー、ナイジェル・ケーボンによって設立され、彼自身のアーカイブを着想源としたミリタリーウェアやワークウェアは高い評価を得ている。日本にも多くのファンを持つ同ブランドは、今回が「THE UNION」初出展となったが、日本国内では路面店を構え、セレクトショップでも広く展開されている。
ヘリテージ系メンズブランドの印象が強い同展だが、2026年秋冬コレクションでは、コンテンポラリーなデザインやシルエットを取り入れたユニセックス、レディースブランドの出展も目立った。初出展となった東京発のKUROは、日本の職人技術と高品質なデニムに定評があり、近年は特にレディース人気が高まっている。アントワープを拠点とする「Girls of Dust」は、メンズブランド「Eat Dust」のレディースラインとして2018年に誕生。ヴィンテージのワークウェアやミリタリーを女性らしいカットで再構築し、キルティングジャケットやチノパン、ワークパンツ、デニム、ベストなど、メンズ由来のユニセックスなアイテムを展開している。
スウェーデン発の「O.P JEWELLRY」は「THE UNION」の常連ブランドで、ヘリテージスタイルにも馴染む本格派シルバージュエリーでありながら、コンテンポラリーアートの要素を取り入れたポップで愛らしいデザインも特徴だ。今シーズンはアーティストとのコラボレーションラインを発表し、リングは女性向けサイズの生産も可能とのこと。
他にも、FullCount、Pure Blue Japan、Y2 Leather、Iron Heart、Hansen Garments、Indigoferaなどをはじめとするブランドが名を連ね、氷点下になることも珍しくない厳しい寒さの中、初日から多くのバイヤーや関係者が来場し、活気に満ちた3日間となった。かつてベルリンの主要トレードショーとして知られていたPREMIUMやSEEKが開催休止となっている現在、モードやストリートとは一線を画すトレードショーとして「THE UNION」は着実に知名度を高め、ヨーロッパ市場開拓の場として重要性を増している。
また、同展は昨年より東京開催もスタートし、欧州や北欧のブランドが多数参加。今年も2月17日から19日の3日間にわたり開催予定で、今後さらなる認知拡大と注目を集めていくことが期待される。なお、ヘリテージブランドにおけるデニムの傾向やトレンドについては、繊研新聞紙面にて詳しく掲載予定のため、ぜひそちらもチェックして欲しい。

長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。
セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。