2020年はこれまでにないほど忙しくなる予定だった。”新型コロナウイルス”がパンデミックとなり、世界中を恐怖に陥れる前までは。
日本を含むアジアでの広がりを心配していたのはもはや昔のこと。イタリアでの感染者が一気に広がったことをきっかけにドイツも即座に警戒態勢を敷き、学校、美術館、クラブなど公共施設のほとんどがシャットダウン、それでも感染者の増加は止まらず、あっという間に国境を封鎖、今では外出にもかなりの制限が掛かり、街全体がほぼロックダウン状態となった。今が厳戒態勢のマックスであることを願わずにはいられない。
2020年が始まった時、こんな世の中を一体誰が想像出来ただろうか?私たちの未来は一体どこへ向かおうとしているのか?
初期に感染者が出ていたにも関わらず、欧米との温度差があり過ぎる今の日本のゆるゆるのほほん対策には疑問と不安しかないが、全てはオリンピックのためだったように思える。何より大打撃を受けているのにも関わらず、補償が絶望的なファッション、音楽、イベント業界を生業としている友人、知人を心配している。他国のように政府の指示のもと規制をかけてしまったら、国が確実に補償しないといけなくなるから”自主規制”という責任逃れをしているだけに思えて仕方ない。様々な形で署名活動や少額過ぎて猛反発を受けている国からの補償が良い方向になってくれるのを切に願う。
ベルリンにおける現状を伝えたい。まず周りに数え切れないほどいるアーティストの友人たちのギグが全てキャンセルになり、数ヶ月分の収入が一気にゼロになった。再稼働の目処が全く見えないローカルクラブに関しても存続危機が心配されている。現在は、「United We Stream」というライブストリーミングサイトが立ち上がり、クラブを守るためのドネーションと、ベルリンの各ローカルクラブからDJやライブを生配信するプログラムが行なわれている。
ベルリンに限ったことではないが、レコードショップ、レーベルは臨時のセールを開始し、Bandcampは従来の手数料を取らずに、売上げの全てをアーティストに還元するサービスを始めた。
ファッションにおいても同様に全く先の見えない状態になっている。3月上旬、クライアントであるベルリンのブランドと予定していたミーティングがキャンセルになったと同時にその影響は一気に出だした。”1週間様子を見よう”は今では無期限状態となり、ベルリン中のショップは全てオンライン販売へと切り替わり、ショッピングエリアはシャッター通りかのように静まり返った。友人の情報によると、有名ブランドショップが立ち並ぶ通りはすでに撤退し、もぬけの殻状態となった店舗がいくつもあったらしい。余力のない個人店に関しては、一時的な休業ではなく、閉業もしくは倒産も有り得るだろう。実際、イギリスのローラ・アシュレイが経営破綻となった。元から経営難だったところにコロナウイルスが追い打ちをかけた結果だろう。今後こういったブランドが続々と現れるだろう。
街中がシャットダウンになる直前、ベルリンの人気セレクトショップ"VooStore"のストックセールに行った。同セールはコロナの影響で開催されたわけではなく、もともと予定されていた催しだったが、エントランスには消毒液を持った強面のセキュリティーが立ち、全員に消毒を強制するという異様な光景の中でのストックセールだった。ついこの間の出来事なのに、もうすでに遠い記憶のように思える。
ドイツにおける唯一の希望はメルケル首相の心強い発言とフリーランスへの補償である。私たち外国人の、しかも様々な種類のあるフリーランサーに対して、どういった形でどこまで補償してくれるか?随時情報が更新されていくので、きちんと追っていきたいと思う。
Bloombergの日本語版がこちら。メルケル首相は10分以上にも渡る会見を行い、実際にはもっと多くのことを語っている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-11/Q7106ZDWLU7901
それでも、私自身も含め、身近な多くの友人たちはエンターテイメントがなくては生きていけない。単なるお金の問題ではなく、これまでの人生を賭けてきた生き甲斐なのだ。それを奪われてしまったら、、、?もちろん今は、感染しないことが何より大事である。免疫力を低下させないためにもメンタル強化に繋がる希望ある対策を個人レベルでも考えていかなければならない。
長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。
セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。