日本人監督作品が注目を集めた今年度の第75回カンヌ国際映画祭。その「ある視点」部門正式出品された『PLAN 75』にて、監督・脚本を務めた早川千絵に「カメラドール 特別表彰」(Caméra d'or Special Mention)が授与されたことは記憶に新しい。
今月17日から全国公開になった本作は、早川監督にとって初の長編監督作品。その記念すべき一作が、いくつもの快挙を成し遂げたことは、本人のみならず、スタッフやキャスト、そして多くの賛同者にとっても感慨深いはず。
そこで、上記授賞式における監督のコメントの一部をここに。
「『PLAN 75』という映画は今を生きる私たちに必要な映画であると言ってくれた方がいました。その言葉が心に深く響いています」
さらに「経済的合理性を優先し、人の痛みへの想像力を欠く昨今の社会に対する憤りに突き動かされて生まれた」という本作ヒロインに対するコメントもシェアしたく。
「倍賞千恵子さん演じるミチという女性の姿を通して、人が生きることを全肯定する。そんな映画にしたいと思っています。倍賞さんはこの映画に命を吹き込んでくれました。」
そんな倍賞さんの役作りにおけるエピソードを、PRスタッフに伺った。
「2度の衣装合わせの際、『派手過ぎない?』『高級過ぎない?』と思ったものがありつつも、いざ完成した作品をご覧になったら、『さすが、監督!』と思われたそうです」
ちなみに倍賞さんの意見も取り入れた衣装の一部は、ご自身の所有物。かつまたノーメイク、ヘアも白髪を足すなど、こだわりのつまったミチがスクリーンに登場!
「光と影の中で息をのむほど美しい倍賞さんのたたずまい、その存在自体がこの映画の魅力の一つです。」と語る監督に、筆者も同感!!!
『PLAN 75』
新宿ピカデリーほか全国公開中
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee
日本が誇る大女優の第一人者と新鋭女性監督による世界的注目作の話題でスタートした6月後半の「CINEMATIC JOURNEY」。今回は、味わい深さを秘めた「ビンテージの香り」をテーマに巡ってみたく。
そんな気分を味わう次の作品のイントロとして、かつまた前回のテーマ「時と眠りとシネマの相関性⁉」とのマリアージュが香るトピックを少しばかり。
想定外に長引くコロナ禍から、在宅勤務もすでにノーマルになった今。「コロナ疲れを実感する人口増加」というデータを目にしたことがある。
そうした影響から注目度がアップするリカバリー(疲労回復)ウエアのブランド「リフランス」。
着用するだけで血流を促し、疲労回復や安眠へとナビゲートしてくれる素材(プラウシオン)を用いた、世界でも珍しい「一般医療機器」のパジャマをいち早く世に送り出したブランドらしく、愛用者の世代は幅広いのが特徴だ。
またこの春夏シーズンはコーデ次第でサマードレスとしても大活躍してくれるワンピースも登場し、バリエーション豊かに進化を遂げている。
ちなみに約270gというストレスフリーな軽さと、Aライン&フリーサイズというデザインは、「カスタマイズの楽しみを含んでいる」と手前勝手な筆者の好奇心も含み、ボタンを加えたり、前後を逆にしてスタイリング(写真上)してみたり、目下「四六時中リカバリー」を目指して愛用ing!
というわけで「ビンテージの香り」がする、安眠を誘う「青い海」色のサマードレスと、どこか似て非なる牧師様のいでたちに、思わず笑みがこぼれた場面写真は、『ルッツ 海に生きる』の1シーン。 冒頭の作品同様、マルタ出身のアメリカ人監督アレックス・カミレーリの長編監督デビュー作だ。
故郷である地中海の島国マルタを舞台に、家族代々受け継いていく伝統漁船ルッツと共に生きる現実の厳しさを、観る者たちは知ることとなる。
ちなみにカミレーリ監督の「映画の概念の根幹を形成する」イタリア・ネオレアリズモ。その代表作として知られるルキーノ・ヴィスコンティ監督作『揺れる大地』にオマージュを捧げたく、ヴィスコンティ同様、普通の漁師を主人公に迎えたとのこと。
ところで、赤、黄色、青、緑を基本とする鮮やかな木造船ルッツの船首には、特徴的な2つの目が描かれており、古代フェニキアの習慣に由来すると考えられ、「オシリスの目」と呼ばれ、航海中の漁師を守ると信じられているとか。そして本作でも印象的に登場しているのでご注目のほど!
6月24日(金)より、新宿武蔵野館他にて全国順次公開中
配給:アーク・フィルムズ、活弁シネマ倶楽部
© 2021 Luzzu Ltd
「ビンテージの香り」をテーマに巡った今回の「CINEMATIC JOURNEY」。ゴールは、東京表参道にある「エスパス ルイ・ヴィトン東京」で9月25日まで開催中のラシード・ジョンソンによるインスタレーション《Plateaus》(2014年)の日本初紹介となる展覧会。
「私が用いる素材にはどれも実用的な用途があります。」と語るラシード。
あたかも子供時代に遊んだジャングルジムを想起する作品の構成要素には、ワックス、木、スチール、銅、シアバター、陶器、さらには本やLPレコード、ビデオテープ、植物、トランシーバーなどなど多種多様。それはまたアーティストにとって、ビンテージ感が香る宝の山のようにも見える。
ちなみに活動内容もまたかなり幅広く、彫刻、絵画、ドローイング、映画、パフォーマンス、インスタレーションなど、真のマルチタレントと称すべき人物の一人と言えよう。
そして当「CINEMATIC JOURNEY」としてはやはり、サンダンス映画祭で初上映され、2019年にHBOで公開されたという、リチャード・ライトの『Native Son』の映画化で、長編映画デビュー作(邦題『ネイティブ・サン ~アメリカの息子~』)は興味津々!
なお本展は、フォンダシオン ルイ・ヴィトン が所蔵する、選りすぐりのコレクションを世界的に紹介する「壁を越えて(Hors-les-murs)」プログラムの枠組みの一環として企画されている。
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中