アートに生きる男たちのロマン<その3>(宇佐美浩子)

2019/07/24 06:00 更新


サマースペシャルエディション2019として「アートに生きる男たちのロマン」をテーマに、前・中・後編の3部構成企画による7月の「CINEMATIC JOURNEY」。

フィナーレを飾る後編の幕開けは、北極はグリーンランドから届いた、ハートウォーミングな1作『北の果ての小さな村で』から!

≫≫宇佐美浩子の過去もレポートはこちらから


上記の北欧風な色合いの家々が雪景色の中に点在する画像を見て、「ところでグリーンランドって、どのあたりだっけ?」

と私同様、考えあぐねる方もおいでかと思い、本作資料をはじめネットサーフィンしつつ、リサーチしてみた結果の一部を下記に!

・北極海と北大西洋の間にある世界最大の島と称され、グリーンランド語では「人の土地」という意味を持つ。

・1721年から1953年まで長年にわたるデンマークの植民地時代を経て、現在はデンマークの一地方と同格の地位にある。

・人口は東京ドーム収容人数(約55,000人)とほぼ同じ。

さらに監督から、サプライズな本作にまつわる真実が

〝登場人物は全員、本人が演じています!〟


数々の受賞歴を誇るフランスの映画監督かつ撮影監督という肩書のサミュエル・コラルデ。

彼が初めて撮影したドキュメンタリー作品(@フランスのジュラ山脈の雪に覆われた実家の農場)の頃から想い続けた夢の実現となった。

それは、牧歌的で雪に覆われた遠い世界であるグリーンランドでの撮影。

というわけで監督が約2年の歳月を費やしロケハンをし、巡り合った人口80人ほどの小さな村、チニツキラークと現地の人々との縁から始まる物語だ。

主人公は実家の農場の後継ぎ問題に思い悩んだ末、デンマークから村の小学校への赴任を決意する28歳の新人教師アンダース・ヴィーデゴー。

わずか10人ほどの生徒たちとも、またその保護者達や村人たちともうまく交流できずに孤立し、悩める日々ばかりが過ぎていく中、真の異文化交流に必要な歩み寄り、互いを知ることの大切さを、身をもって学ぶこととなる…

果たしてその後の彼は?

実は、なんと現地にて結婚し、今なお先生として暮らしているとのこと。(PR担当者談)

なお、参考までに監督のコメントによれば、

〝家族の食卓や学校の様子、日々の生活の瞬間などのショットは完全にドキュメンタリー!〟(本作資料より)


『北の果ての小さな村で』

7月27日より、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー

©2018 Geko Films and France 3 Cinema

配給:ザジフィルムズ



「アートに生きる男たちのロマン」をテーマに、「第7のアート(芸術)」こと映画を軸に巡る「CINEMATIC JOURNEY」サマースペシャルエディション2019。

続いての登場人物は、「映画×絵画」がキーワードのアーティスト、ニコラス・ハットフル(下記画像)を訪ねて銀座のギャラリー「THE CLUB」へ!


日本を代表する映画監督、小津安二郎を敬愛する海外のファンは実に多いと、しばしば実感する。

が、彼もまたその一人だった。

東京で生まれ、イギリスで育ち、ローマでも学ぶなど、グローバルな視野と感性に富むアーティストが、小津監督作品と出会ったのは、数年前、母国でのことだそう。

以来、すっかりその作風に魅せられた彼の心象風景ともいうべき作品をはじめ、アジア初となる本展『Thermals of the Heart-心の温度』(~8月24日まで)のために描いた新作14点が展示されている。

〝飾り気のない日常の一コマが小津ならではのタッチで描写されたショットに、言い知れぬ深い感動を得た〟

そう語る彼が、小津を題材に描いた作品は、上記の「Seven Seconds」を筆頭に、どこか幻想的でそよ風のような香りがする。

さて、香りという言葉から連想するキーワードは「アロマ」。

そこで「CINEMATIC JOURNEY」サマースペシャルエディション2019のテーマ「アートに生きる男たちのロマン」の締めくくりに相応しい館へご一緒に!


お気に入りの1作『ア・フィルム・アバウト・コーヒー』を筆頭に、様々な切り口で、映画の主人公に登場するコーヒー。

その魅力は奥深く、私たちが1杯のコーヒーを口にするまでに関わる人々の限りない情熱と愛情も感度的!

その一端となる「コーヒー豆製造工程への理解」を深めることができるミュージアムも併せ持った館が、横浜の倉庫街にオープンした。

近年、国内外のコーヒー愛好家に支持されていると評判の堀口珈琲が新設した横浜ロースタリーだ。

「パパ」と称す熱き魂の創設者の堀口俊英さんと少数精鋭のチームが満を持して実らせた夢の一つ、と言えるのだろう。


「工場は『豊かな建築』になるのか?」という命題のもと風味と食品衛生の品質向上を最重要目的として設計された工場は、上記シネマの画像に見る、北欧の家並みのような愛らしさが香る外観に加え、人とモノの流れに対応した人間味にあふれた温かさが格別だ。

それはブランドコンセプトにも記されている文中で最も好きなフレーズ

〝コーヒーの世界をめぐる旅がもっと魅力的になるようにお手伝いします〟

そんなナビゲーターとして、一般公開してくれる館の屋根にカタチに即した大きな三角窓から見える景色は、スタッフもゲストもひと時のコーヒータイムのような和みの時間を味わえそう。

8月からスタートの一般公開スケージュールも要チェックのほど!


宇佐美浩子の過去のレポートはこちらから

うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



この記事に関連する記事