バッグと革小物の「コケット」は今年で設立20周年です。16年前に東京都台東区でアトリエ兼ショップを出し、昨年8月に同千代田区神田に移転して「コケットカンダ」を開きました。店の運営で感じていることをデザイナーで代表の林きょうこさんに聞きました。
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事業の主体は、セレクトショップに向けたバッグや革小物の卸売りです。当初、店を持つ強い意識はありませんでした。創業支援施設の「デザイナーズビレッジ」を卒業する時、商品作りのための拠点を探し、条件に合った物件が店舗の利用に向いていたことから、アトリエ兼ショップという構成にしました。
その結果、取扱店やポップアップショップを通じて認知が広がっていく中で、他のアイテムや配色も見たいといった要望に店舗で応えることができました。ECを始めると、実物を見て買いたい方が足を運ぶようになりました。続けるうちに、顧客も自分も、40代、50代となり、「持ちたい」「欲しい」と思うものを作ろうと、商品の見え方やデザインを少しずつ切り替えてきました。さらに、レディスを想定したサイズ感のコケットのバッグでも、男性のユーザーが出てきたことから、ユニセックスを意識するようになりました。店頭で利用者から直接話を聞くことが、商品や店舗での新しい活動のヒントになっています。
入りやすい店に
コケットカンダの特徴の一つはコーヒースタンド。移転時はそれを考慮して物件を探しました。注文を受けて豆をひいて入れるのに4分ほどかかります。その時間でお客さまと会話をしたり、コーヒーをお待ちいただく間に店内を見てもらったり。「革なのに軽い」「思っていたよりも安い」「日本製なんだね」といった様々な声が聞かれます。コーヒーのリピーターが、プレゼントにポーチを購入するなど、ブランドにとって出会いが生まれています。
バッグは気軽に買える価格帯ではありません。「バッグだけが並ぶ店舗は身構えて入店しづらい」と、ギフトを意識した小物雑貨も扱っています。メンズライクな革小物、ストールや刺繍のブローチ、グラスコードなど、コケットで作っていない商品を扱うことで、客層の幅も広がっています。
「2階の多目的スペースでワークショップや茶話会、サロンなどを開き、人と人をつなぐことをしたい」と林さん。外部の方にも使ってもらい、人が集まり有益な活動ができる場所にしたいと考えています。街に店があることの意義や大切さを念頭に、地域に溶け込む店を目指したいそう。周辺はオフィスやマンションが立ち並ぶ静かなエリア。「暗くなってからポンと店に明かりがあるとホッとする」と近所の雑穀屋の方に言われてうれしかったと言います。
■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)
デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。