防寒アウターの横綱ーダウンを学ぶ③

2017/09/16 04:45 更新


ダウンの質を表す目安のひとつが「フィル(フィリング)パワー」値です。

1オンスのダウンを圧縮し、それが何立方インチ復元するかを、一定の温度・湿度の条件下で測定したもの=かさ高性で、数値の高いものほど良質なダウンだと言えます。

フィルパワーの数値が高ければ高いほど空気包含力があり、同じ重さであれば保温性は高くなりますし、少量の羽毛でも温かいダウンがつくれます。550以上が一般に高品質だと言われています。

弾力性と通気性のためにフェザーは欠かせない

ダウンにはフェザー(羽根)を混ぜます。弾力性と通気性を増すためです。一般的には、ダウン70―90%に対し、フェザー10-30%の割合が良いとされています。よって、40%以上フェザーが占めているダウン製品は安く、品質も高くはありません。

フェザーは長さが6.5㌢以下の柔らかいスモールフェザーを使います。スモールフェザーは空気を内包できないため保温性は高くありませんが、通気性に富みます。

欧州やアジアがダウンの生産国

さて、ダウンはいったいどこで採られているのでしょうか。

寒冷地や寒暖の差が激しい地域で採れたダウンほど良質とされています。主な産地は、ポーランドやハンガリー、チェコ、ドイツ、フランス、イギリス、アイルランドなどの欧州のほか、カナダ、アジアでは中国、台湾、韓国などで採られています。

世界最大の生産国は中国です。北朝鮮に接する中国東北の吉林省の長白山麓(北朝鮮では白頭山)で、野生に近い形で飼育されるフォレスト・グースは高品質です。

とはいえ、総じて欧州やカナダで採取されるダウンの方が、アジアのそれより良質と言われています。羽毛やフォアグラ採取の目的に飼育されるケースが多く、成熟期間が長いため大きいためです。アジアは食肉目的が多いため、総じてダウンは小さいようです。

参照:防寒アウターの横綱 ダウンを学ぶ①防寒アウターの横綱 ダウンを学ぶ②



実際、羽毛はどうやって採取(ピッキング)するのでしょう。

これには3つの方法があります。

①食肉として殺(あや)められた鳥(生後2、3ヶ月)の副産物として採る方法

②生きている鳥から採取する方法です。

①はマシンピックとハンドピックに分けられ、後者の方がダウンボールを壊すことなく採取されるので品質が安定しており、良質と言われています。ただし、食用にされるものの多くはマシンピックされます。

②はライブハンドピックと呼ばれ、ダウン用に一定期間飼育された鳥を人の手で生きたままの状態で羽毛が採取されます。最も良いダウンが採れると言われています。


生えたらまた採取、と何度か繰り返すライブハンドピックは、EUでは動物の愛護の観点から違法とされていますが、制裁がないため違反が後を絶たず、問題になっています。



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