デザイナーの落合宏理さんはファミリーマートと共同して21年3月に立ち上げた「コンビニエンスウェア」で、昨年11月末にショーを行った。靴下やTシャツにとどまらず、全身をコーディネートできるラインナップに発展させた理由を尋ねた。
(須田渉美)
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人生のドラマを意識
24時間営業しているコンビニエンスストアで、洋服を売る文化、新しい価値を作っていこうと始めました。緊急需要で買うものではなく、いい素材やデザイン性の高いものを身近に手にできる店にしていきたいと。
ショーでは、デニムアイテムやMA-1、パッカブルカーディガンなど本格的なアウターも見せました。麻布台ヒルズ店限定で販売していますが、これらはショーのためではなく、コンビニエンスウェアで全国に出していきたいもの、近い未来を提示したいと考えてのことです。地域の生活に根付いていけるように、ファミリーマートを背景にした一人ひとりの人生のドラマを意識して構成しました。
一部の製品には、ラグジュアリーブランドに供給している日本の生地も使っています。そういった質の高い素材に気軽に触れて、心地良さを感じてもらえたら、SNSなんていりません。全国の約1万6400店で、商品デザインを通じてコミュニケーションを取れることは大きな強みです。
今販売している靴下でも、黒よりもピンクや若草色の売り上げが良い数字も出ています。売る側がベーシックな色しか売れないと決めつけるのではなく、冬から春を感じるコミュニケーションを日本中に広げていくことが大事なんです。
意見を聞くのが大事
ここまで行きつくまでに、たくさんの気づきもありました。いい物作りをするには、いろんな人の意見を聞くことに尽きますし、自分の気持ちを伝えるためにも、まず会話をすることを心掛けています。関西の加盟店のオーナーと話していると、例えば、東京のファッションではごく普通の白のデニムスカートははかないと言われたこともありますし、自分にとっての当たり前がそうじゃないケースは多々あります。「コンビニだから安心して皆が手に取れるよね」という信頼を丁寧に形にしていきたいと考えています。