芸能人のプライベートをのぞくテレビ番組で、ある女優が「服は天然繊維じゃなきゃ買わない」と断言していた。店頭で好みのデザインを見つけると、真っ先に品質表示タグをチェック。綿100%と書かれているのを見て、「天然繊維はやっぱり、肌触りが良いですから」と、カメラに向かって満足そうにほほ笑んだ。
「天然繊維は良い、化学繊維は悪い」。肌に合わないなどの理由もなく、化学や石油といった言葉の印象だけで、漠然と決めつけている人は多いように思う。化学繊維にも植物を原料にしたものがあるし、そもそも、素材から服になるまでに様々なプロセスを踏むのに、どこでどのように作られたかという観点は抜け落ちていたりする。
ファッション業界で関心が高まっているサステイナビリティー(持続可能性)に、似たところを感じる。たとえば、ファーの使用を止め、フェイクファーに切り替えるブランドが相次いでいるが、石油由来のフェイクファーが自然環境にもたらす影響は考慮したのか。
社会や環境に対し、責任ある製造とは。考え方も手段もたくさんある。今は原料ばかり注目されているが、製造工程や労働環境なども対象だ。サステイナビリティーを掲げる前に、サプライチェーンへの理解を深め、議論を尽くすべきではないか。
(侑)