ウールの物語③冬も夏も、の万能選手

2017/02/04 05:30 更新


  羊の毛であるウールは天然繊維の中でも、動物繊維と呼びます。植物繊維の綿や麻と、どんな違いがあるでしょう?

■空気の層が夏冬OKの理由

  まず、保温性に優れています。麻や綿しかなかった昔、欧州に温かな羊の糸が登場した時は、まさに天からの贈り物だったことでしょう。羊の毛はまっすぐではなく、縮れていて(これをクリンプと言います)、約60%もの空気を含んでいるため、温かいのですね。  

ウール1
ウールが暖かいのは空気をたくさん含むため

  この空気の層が、断熱材のような役割を果たすので、夏も涼しいのが特徴です。冬のイメージが強いですが、日本のように真夏に湿度が高くなる地域でなければ、ほとんど1年中身につけられる素材です。

 さらに、吸湿・発散性の高さもウールの魅力です。汗を吸収すると、すぐに発散するので、快適に過ごせるのですね。吸湿性は繊維の中で最大。湿気を吸収すると、熱を発する性質もあるため、汗で体が冷えにくく、インナーやスポーツウエア、寝具に向く素材というわけです。  

ウール2
吸湿・発散性もあり、ウールは夏でもOKな素材

  この「吸湿・発熱」という性質は、もともと、どんな繊維も持っているのですが、その熱量が最も高いのがウールの特徴です。その熱量は、綿の2倍以上といわれています。スポーツウエアの世界で、吸湿・発熱の機能をぐっと高めたアクリル系繊維が90年代に開発され、市場にも定着しましたが、そのキャッチコピーの元祖は、天然のウールと言えるでしょう。

■合繊と比べ、火が付きにくく燃えにくい

  思いがけない機能という点では、ウールは火が付きにくく、燃えにくい素材でもあります。これは、植物繊維と比べて特徴的で、うれしい機能ではないでしょうか。 当然、強い火に当たり続ければ燃えますが、火の元を取り除けば、広がることなく自然に消えます。

 例えば、原料が原油である合繊と比べると、合繊は溶ける危険性もありますが、ウールの場合はそれがないので、やけどの心配も減ります。カーペットや子供服、シニア向けの服などに、おすすめしやすいポイントでもあるでしょう。  

ウール3
持ち味が、洗濯時にはデメリットにも

  このように、ウールは優れた点の多い天然繊維です。ただ、洗濯による縮みには注意が必要です。ウールは、水の中で、もんで洗うと、繊維が縮み、繊維と繊維が絡み合う性質があります。これがフェルト化で、その持ち味を生かした製品もあるわけですが、一般的な衣服には弱点の一つです。 そのため、洗濯は温度が35度くらいのぬるま湯で、手早く押し洗いするのがよいでしょう。すすぎも押して済ませ、ニットなどの場合は、残った水の重さで伸びるのが怖いので、平干しします。

 しかし、ウールの表皮は、撥水(はっすい)性の高いスケール(キューティクルなどともいう)で覆われ、汚れもはじくため、普通にウール製品を着ているだけなら、生地の表面しか汚れず、汚れが落ちやすいことも覚えておきたいですね(文:若狭純子編集部総合1面デスク)。  

【THE NUMBER】

2倍⇒ウールの持つ熱量は綿の2倍以上といわれている 35℃⇒縮みを避けるために、手洗い洗濯する際の水温は35度くらいのぬるま湯が望ましい



この記事に関連する記事