《米国のデザイナービジネスはどこへ②》DtoCへシフト進む

2020/08/09 06:27 更新


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 卸売りの比重を減らさざるを得ないとしたら、代わりに強化する販路はDtoC(メーカー直販)となる。直営店かECかといったら、今はECだ。直営店と違って、コロナの最中でも売り上げゼロが続くことはない。では、卸売りと比較したDtoCの利点と課題は何か。

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 まず気になったのは、自前のウェブサイトで売る場合、著名店に入っていることで得られた信用が得られない点だ。既に確立されたブランドならその心配はないだろうが、新進ブランドにとって自社サイトで信用を得るのは時間を要することが懸念される。しかしバーニーズの元ファッションディレクターでトゥモローコンサルティングのジュリー・ギルハート社長は、「卸売り先に存在することで得られる特典は、今は以前ほどのインパクトはない」と話す。

 確かにバーニーズやジェフリーなど、入ることでステータスになった店が次々姿を消し、店よりオンラインで買う客が増えている。感染を警戒して、店に足を運ぶ客はますます減るだろう。「ブランドはいまや、ソーシャルメディアを活用して自分で露出度を上げ、卸売り先が送るメッセージでは届かなかった方法で顧客と直接つながれる」とギルハート社長はみる。

ギルハート氏

 もう一つ気になったのは、卸売りを減らしDtoCにシフトすることで総売上高が当面下がるのではないかということだ。しかしザ・ニュースの石井ステラ社長は、「たとえ卸売りの売上高が下がっても、DtoCで得られるマージンでカバーできると思う」と話す。ブランドは卸売りよりマージンを高く取れる上、ブランドの世界を自由に表現し、価格もコントロールしやすく、客の声を直接聞ける利点もある。

 一方、ヒルダンのゲイリー・ワスナーCEO(最高経営責任者)はむしろ、DtoCのリスクを懸念する。ヒルダンでは、独自に見つけた理論を元にDtoCのための融資もしているが、貸す側が直面するリスクが高いため、ブランドにとってのコストも上がるという。ワスナーCEOの考えるDtoCの課題は、①小さいブランドは世界の大手ブランドと競合できるだけのマーケティング予算がない②在庫の管理と在庫を持つための資金繰りはDtoCに集中する場合に必須となる大きな変化③過去の売り上げの動きは何を生産するかを予想する手助けとなるが、DtoCを円滑に回していくために必要な在庫は憶測で決めないといけない④消費者のオーダーは前もって分からない。オーダーは瞬時に行われ、その時に在庫が必要⑤何カ月も前に買い付けがあるわけではなく、事前にキャッシュフローを生み出すことが難しい--などを挙げる。

 それでも、コロナでDtoCを強化するブランドが多いことは間違いない。「エンジニアドガーメンツ」もその一つで、コロナ禍で店を臨時休業した代わりに、4月中旬に米国市場向けのオンラインショップを立ち上げた。帽子やトートバッグなどの小物、独占販売商品などが売れているという。デザイナーの鈴木大器氏は、「コロナで取引先件数が減ったかどうかは、今のところ分からない。今度の展示会(オフライン、オンラインともに)の結果で分かると思うが、来春夏はコロナ禍の影響があるかもしれない。DtoCは以前から検討していたので、この機に卸と併用して展開できればと思う。売り上げは当然減る可能性もあるが、今の状況の中でどうやったらネペンテスらしいアプローチができるのかを考えている」と語った。

鈴木氏

(繊研新聞本紙20年7月3日付)

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