海外の販売エージェント(坪内隆夫)

2014/04/02 11:36 更新


前回「海外でのヨーロッパブランドの販売」についてレポートしました(記事はこちら)。今回はその続きとして、海外のセールスエージェントについて書こうと思います。

一般的にヨーロッパでコレクションを販売する場合、展示会での販売かショールームでの販売かが考えられます。

展示会に来るバイヤーは、何かを購入するという事よりも、面白い商材を探している場合が多いと思います。日本の展示会でもそうかと思いますが、展示会でオーダーが入る事はあまりありません。バイヤーは展示会で気に入ったコレクションを見つけても、後でショールームに行ってオーダーをする場合が多いのです。ただ、小物関係に関してはオーダーする金額もそれほど高くなく、色々な物が見れるので、展示会でそのままオーダーをして行くバイヤーが多くオーダーもつきやすいと思います。

もう一つのショールーム、ヨーロッパでは一般的にPRオフィスよりも、セールスエージェントの運営する販売を目的としたショールームの事をさす場合が多いです。こちらの方はショールーム自体顧客を持っていますし、バイヤーがわざわざそのショールームに訪ねて行く事になるので、バイヤーはある程度買うつもりで来ています。当然、それぞれのショールームの得意とする分野やテーストを持っており、それにあったバイヤーが訪ねてきます。

ショールームで販売してもらう場合、大体どの街でも固定経費を取られますが、ミラノでは経費を取られない所もあります。エージェントの報酬であるコミッションは12~15%、仕事の内容は一般的にはオーダーを取るだけで、オーダーが入るとそのオーダーをメーカーに送り、それから先はメーカーとお店とのやり取りになり、お金の回収もメーカーの責任でやる事になります。

ほとんどのメーカーはセールスキャンペーン中このショールームにコレクションを預け販売を委託します。ショールームはスペースが決まっている為、そこで紹介できるコレクションの数も限られており、いくらこちらからコレクションを置いてもらいたくても必ずしも取り扱ってくれるとは限りません。

またショールームでの販売をお願いした場合、一般的には販売を依頼しているエリアのお客さんのコミッションはすべてそのショールームにあげる事になるので、始めてその地域で販売するコレクションはまだ顧客を持っていない分、ショールームもあまり興味を示してきません。

私のお手伝いをしているミラノのショールームは特にイタリア以外の国のお店への販売を担当しているので、多くのブランドはうち以外のショールームでイタリアマーケットへ向け販売をしています。という事はそれだけでも2つのコレクションが必要になってきます。

海外への販売ではほとんどの場合30%のデポジットをオーダーコンフォメーション時にお店に支払ってもらい、残りの70%をデリバリー前に支払ってもらいますが、同じ国同士での販売になると納品後の支払いになります。

イギリスでは30日後払い、イタリアでは納品後30日、60日、90日に分けてお金が支払われて行く場合が多いです。ただ、支払いの悪い海外で納品後の支払いにしてしまうと、中々お金が回収できない事が多いです。一般的に地中海側の国と、意外かもしれませんが、イギリスもあまり支払いは良くありません。海外のお店に販売する場合、必ず先払いさせる事をお勧めします。

私はこのヨーロッパでかなりひどい経験を何度も受けたり、周りの知り合いから聞いた色々なエピソードあるので、もうなれてしまいましたが、日本のから海外に進出する方にはこんな嫌な思いはしてもらいたくありません。ちなみに私がヨーロッパで担当しているヨーロッパブランドでは、私の担当はイタリア以外なので、どのお客さんもデポジットを支払い、デリバリー前に残金すべて支払い終わってからの納品になるのですが、イタリアのメーカーはイタリアのお店の支払いが悪い為にお金がなく、私の方へのコミッションも遅れます。こんな感じで毎シーズンいつお金が入ってくるのかよくわからない状態がつづきます。もうなれっこですが...。

イタリア市場は現在中々大変ですが、それでもすごいなと思う事は、イタリア人は物が気に入ると、支払い条件が悪くなり前払いになったとしてもどうにかして商品が欲しいらしく、頑張って30%のデポジットを支払い、デリバリー前に残金を支払ってくれます。それと違ってイギリス等はいくら商品が気に入ってくれても、うちの支払い条件に合わない、とあまり前払いしてくれる所はありません。国が違えば考え方ややり方も違います。

またショールームが見つかったとしても色々な問題が起こったりします。販売についての細かい情報を教えてくれなかったり、契約をしても売れないなと思ったコレクションはすみの方に追いやられ、ほとんどコレクションをバイヤーに見せられないまま販売が終わってしまう事もあります。

いいブランドが多く有名なショールームに入るのは大変ですが、入ったとしてもショールームが力を入れているブランドだけを中心に販売したりしている所も多い等々、ブランドとショールームとでの間での問題が良くあります。中々自分にあったショールームを見つけるのも大変です。出来ればそのショールームの評判を聞き、しっかり下調べをしてから契約をした方がよいと思います。

Ciao!



お手伝いをしているイタリアのブランドTer et Bantineのショールーム



坪内隆夫 つぼうちたかお 東京モード学園デザイン学部卒業後渡英、1年後に渡伊。デザイナーとして活動をはじめ、ミラノにてオーダーショプ「TAKAO MILANO」をオープン。2004年2月から2007年9月まで年に2度、ミラノ市の協賛を得て、ミラノファッションウィーク開催中に新人デザイナーを中心とした展示会UPSIDE MILANOを主催。その後、ミラノのショールーム、ファッションガイドブックへのコンサルタントを行い、2012年1月のPITTI UOMOから日本のメンズブランドのヨーロッパでのセールスプロモートをするプロジェクトJAY PROJECTを開始する。



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