コロナの真っ只中、ミラノファッションウィーク始まりました!(坪内隆夫)

2020/10/01 06:00 更新


コロナ問題で世界的にとても大きな打撃を受けているファッション業界、イタリアは普段のイタリア人の様子から考えると、感染しないための予防はあまりしないだろう、と思っていたのですが、良い意味で想像がはずれ、みんな結構気を付けていて、ヴァカンス前には日本の新規感染者をかなり下回るくらいまで抑えられていました。しかし、ヴァカンスが開けると、予想通り特に若者を中心に感染者が増えていました。それらの多くはヨーロッパの他の国に行って戻って来た人の感染でした。

イタリアと比べると、お隣フランスや、それから海を超えたイギリスではマスクもそれほどつけていない人が多かった様で、案の定そういった国の感染者が最近かなり増え、フランスでは9月24日、1日1万6千人以上の新規感染者が出ていました。

そんな中、9月19日からジュエリー・アクセサリーの展示会HOMI Fashion & Jewels Exhibitionが、1日遅れて9月20日からバッグの展示会MIPEL、靴の展示会MICAM、アパレルの展示会THE ONE MILANOの3つの展示会がミラノの展示会場RHO FIERAで開催されました。

THE ONE MILANOは普段ミラノのもう1つの展示会場で、他の展示会より少し遅れ、ミラノファッションウィーク中に開催されますが、今回は少しでも多くの展示会が、同時に同じ場所で開催することで、少しでも多くの集客をねらっているため、他の展示会と同時の開催となりました。それから少し遅れミラノのトルトーナ地区では展示会WHITEが4日間開催されました。ミラノでの展示会の様子をお知らせします。

▶︎展示会出展ブランドとブース

展示会出展ブランドですが、流石にヨーロッパ以外からの出展はあまり考えられないので、やはりいつもと比べてかなり減っていました、しかし、それでも思っていたよりは多くの出展ブランドがありました。また、予算は少ないはずなので、全体的に費用をかけず寂しい展示会の作りかと思っていたのですが、いつもとはさほど変わらないブース作りをしていました。

MICAMはいつもと同様、各ブランドごとブースを作り込んでいました。一方、MIPELは、各ブランド独自のブースの作り込みはなく、展示会が用意した共通の什器を使ったブースに各ブランドがコレクションを並べていました。WHITEもいつもより会場の数が少なくなっていましたが、そこには普段と同じ数の出展ブランドがありました。メイン会場ではモード系のブランドを集めたベースメントのコーナーはありませんでした。

▶︎展示会入場者

気になるヴィジターです。まずMIPEL、MICAMですが、出展者も予想はしていたと思いますが、かなり少なかったです。一般的にミラノのこの手の大きな展示会には色々な国からヴィジターがやってきますが、今回はほとんどイタリア人、その他はちらほらヨーロッパ人、日本の大手の百貨店や、セレクトショップ、商社などは日本人スタッフがイタリアにもいますが、あまり見かけませんでした。

ただ、驚いたことがありました。ヨーロッパに域外から仕事を目的として来る場合、120時間ルールというのがあります。まず自分の国でコロナの検査をし、陰性であれば最大120時間ヨーロッパ に居れるというものがあるのですが、日本人でそうやって今回の展示買い付けに来ているバイヤーさんがいたのです。

WHITEは、入場者はMIPEL、MICAMよりも多かったですが、こちらもやはりイタリア人ばかりだった様です。

▶︎デジタル化

展示会中のセミナーなど普段よりも多く見かけられました

一般的にイタリアのブランドは、海外のお店からのオーダーも多いため、ミラノにやって来ないバイヤーに向けた販売がとても重要になって来ます。

ラグジュアリーブランドなどのプレコレクションは6月には始まっていましたが、そこではショールームに販売スタッフがいて、バイヤーと連絡を取り合ってズームなどで商品を見せながら販売をしていました。9月もどこのショールームでもオンラインでオーダーが取れる様にオーガナイズしてあります。逆にそれがないともうオーダーは取れません。

展示会もデジタルトレードショー、バーチャルショールームなどを設け、展示会場に行かなくても少しでもコレクションが見れる様にしてあります。ただ、私の意見では、新しいコレクションを購入する場合、サンプルを直接見ずに買い付けることはあまりないと思います。

また、既存のブランドのオーダーをする場合は、展示会のデジタルトレードショーを見るよりは、直接メーカーと連絡を取り合ってオーダーすると思うので、こういった展示会のデジタルトレードショー、バーチャルショールームなどはどれだけ役に立つかわかりません。

WHITEの会場、ヴィジターは見かけられたが、ほとんどイタリア 人

▶︎ミラノファッションウィークの後

ミラノのファッションウィークももうそろそろ終わり、続いてパリのファッションウィークに入りますが、このレポートの初めに書いた様に、パリではコロナの新規感染者がとても多く出ています。このまま感染者が増えていくと、色々な規制が出てくるかもしれません。先日も、パリからミラノに飛行機で入国した場合、コロナ感染の検査が必要になりました。

これまで多くの海外のバイヤーは、ミラノのファッションウィークに来なくても、たくさんのブランドの集まるパリのファッションウィークに行き、そこでオーダーをしていました。イタリアブランドでもパリでの販売の方がイタリアでの販売よりも重要なブランドも多く、パリは外せない重要なセールスをする場所だったのですが、パリの感染者が多いということで、今回はパリでセールスキャンペーンをしたとしても海外からのバイヤーも期待できず、今回のパリは見合わせるところがほとんどのようです。

夏のヴァカンス前にはだいぶ感染者が減って来ていたヨーロッパですが、ヴァカンス後また増えてしまいました。ヨーロッパの多くの国はロックダウンを経験し、ロックダウンをすると経済的に大きな打撃を受ける事がわかっているので、なるべくそれは避ける様にしています。前回は途中で中止になってしまったミラノのファッションウィークですが、今のところは無事終了しそうです。本当に早くこのコロナ収束してもらいたいものです。


つぼうちたかお 東京モード学園デザイン学部卒業後渡英、1年後に渡伊。デザイナーとして活動をはじめ、ミラノにてオーダーショプ「TAKAO MILANO」をオープン。04年2月から07年9月まで年に2度、ミラノ市の協賛を得て、ミラノファッションウィーク開催中に新人デザイナーを中心とした展示会UPSIDE MILANOを主催。その後、ミラノのショールーム、ファッションガイドブックへのコンサルタントを行い、12年1月のPITTI UOMOから日本のメンズブランドのヨーロッパでのセールスプロモートをするプロジェクトJAY PROJECTを開始する

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