「ラ・シャペルリー」/フランス帽子のアトリエ博物館レポートの後編です。
円錐になったうさぎの毛のフェルトはどうなるのか? その続きは、ラ・シャペルリーのアトリエで現在帽子作りを研究しているイザベルさんのデモンストレーションをまじえてお伝えします。
ーアトリエ見学ー
これからコーヌを帽子に形成します
2.成形作業
うさぎの毛をフェルトにし、フェルトをコーヌ(円錐形)にしたら、次はコーヌを帽子のカタチにする成形の作業。イザベルさんが蒸気の中で手早くその工程をデモンストレーションしてくれた(写真をご覧ください!)。
熱い!
コーヌを蒸す(左)、コーヌを取り出す(中)、熱いうちに型に乗せる(右)
紐を使ってカタチにしていく(左上)、だんだん帽子になってきた(右)、
ブラシをかけ、型からはみだした部分をハサミでカットする(左下)
同じ工程で中折れ帽も
帽子の型。あれもこれも作ってみたい
こちらは機械による成形の作業場
3.帽子に飾りをつける
形成までは体力が必要なため、男性の作業になっていたそうだ。フェルトが、まるで繭から脱皮するように、帽子のカタチに出来上がったら、今度は飾りをつけて美しい蝶のように仕上げる。
ここからは女性たちの仕事。8人グループが引き出し付きの八角形の机につき、流れ作業で飾りを付けていたそうだ。
ガルニサージュ(飾り付け)の部屋(左)、とても機能的な八角形の作業机(右)
■帽子博物館
第1幕 シャポービジネス
アトリエで帽子制作の工程を見学しながら、場所は徐々に博物館になっていく。当時ここで作られた帽子を、フレシェ社はどのように販売していたのか。まずはそのビジネス戦略を、パブリシティやアーカイヴで見ていく。そして今度は実際に帽子を被ってみよう!
1998年までサンテティエンヌという都市で営業していた高級帽子店ブリュイアのブティックが再現されている。磨かれた板とガラスの内装、木調家具、とても美しい店にうっとりしてしまう。
どこかのマダム、ムシューになりきった気分で、数々の帽子を被り、お似合いのものを見つけたら設置されているフォトマトン(スピード写真)でポートレート!
数々の資料から、フレシェ社の帽子ビジネスの発展を辿る
高級帽子店ブリュイアの内装
第2幕 シャポーの旅へ
産業の発展、モードの変化などいくつかのテーマを交えながら、中世から今日までの帽子の歴史を辿っていく。ここには帽子作家竹口真由美の作品も展示されている。
博物館
■企画展
” Monsieur Jacques, Jacques Pinturier “(ムシュージャック、ジャック・パンチュリエ展)
自作を被ったジャック・パンチュリエ氏
83才の帽子デザイナー、ジャック・パンチュリエ氏の初の回顧展が10月4日まで開催されている。
王族やセレブ、政治家たちの帽子をデザインし、数々のシャポーコンクールの賞を獲得。プラスチックやメタルや洋服の裏地など、帽子の領域では考えられない素材を使い、帽子という手段で造形美術を制作したパンチュリエ氏。
彼のクリエイションを見ると、頭が解放された気分になる。
パンチュリエ氏のくるくる回る作品
■ブティック
ここで制作した春夏、秋冬コレクションの帽子を販売している。
■レストラン
パリに引けを取らないグッドな内装デザイン。食事もなかなか美味しい。
■帽子作りの技術を伝えるために
ラ・シャペルリーでは、帽子作りの技術継承を目的とした短期講座のプログラムを用意し、
研究生を受け入れている。奇数の年に帽子の国際コンクールを開催している。
見学した誰もが「すばらしい」と評する、帽子のアトリエ博物館。パリから約3時間の道のり。行ってよかった。日本からはもっともっと遠い。だからこそ、さらに大きい感動になるだろう。
★インフォメーション
アドレス/31, rue Martouret
開館時間/14~18時
日曜祝日は14時30~18時30分、月曜閉館
※7、8月は毎日11時~18時30分
入場料/6ユーロ、学生子ども3ユーロ
ウェブサイトはこちら(仏語のみ)
松井孝予
(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。