デュカスでセーヌの美味な旅を(松井孝予)

2019/04/22 06:00 更新


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DUCASSE SUR SEINE

それは_ 

あめんぼのようにセーヌの水面を流れてゆく

水飛沫も音もなく

太陽を浴びて輝く水の上を

果てしなく静かに静かに流れてゆく


「それ」とは_

DUCASSE SUR SEINE  デュカス・スュール・セーヌ

昨年オープンしたアラン・デュカスのボートレストラン。

セーヌクルーズをしながらデュカスのランチ、ディナーを楽しめるのですよ。


セーヌのディナークルーズ。

ご経験済みの方ならご存知でしょう。

船からパリの絶景を眺めながら、でもテーブルには嘆きの料理にワイン。

しかも周囲は「きゃーきゃー」とウルサイ。

船は揺れながら轟音を立てて前進してましたっけ。

デュカスのセーヌクルーズ革命

ポール・ボキューズ、ジョエル・ロビュション亡き今、フランス料理界の帝王でありビジネスマン、アラン・デュカス。(ちなみに彼は2000年にモナコに帰化したフランス人)

世界にレストラン30店(今年東京にもオープンすると聞いている)、会社7つ(コンサルティング、出版、学校…)を展開する彼。

ミシュランの星を余るほど持つこの天才シェフは厨房には立たず、各レストランのシェフを指揮する総監督。

鋭いヴィジョンを持ち、トレンドを生み出し、ヒストリーを語り、コンセプトを劇化し、独自のディテールを創る。

デュカスの側近は彼を「料理界のラガーフェルド」(もちろんカール)に例える。


このデュカス。セーヌにも革命です。

デュカス・スュール・セーヌは、セーヌ初の電気によるボート。

建築家Gerard Ronzatti ジェラール・ロンザッティが手がけた水に浮かぶパビリオン。

あめんぼのように水面を滑るように進む訳です。

この船はレストランとして設計されたので、船内には広々とした厨房があります。

船内で下拵えからお皿の盛り付けまですべてここで行われているとは、驚きです。

なのでこれまでクルーズといったら地上で作られたものを船内で「定食(ムニュ)」として出されていたのですが、ここでは席に着いてからシャンパーニュ(シャンパン)片手に、季節のカルト(メニュー)から好きなものをオーダーできる。ああ、夢のよう。

オマール、ホタテ貝の赤身のソース ⒸPMONETTA
温かいプチパテ ⒸPMONETTA

厨房内は「撮影禁止」なのでヴィジュアルなしなのですが、フツーのレストランの厨房より広く、36人のキュイジニエ(料理人)たちが働いています。

シェフはデュカス傘下のレストランで経験を積んできたFrancis FAUVEL フランシス・フォーヴェル。

素材を物語るように、そのものの持つ美味しさを引き立てる。

クラシックな料理を行きすぎたコンテンポラリーにせず、今のパリの料理にしている。

味覚をいっぱい詰め込まず、引き算しながら最高のハーモニーを作り出す。

ムダな飾りのない料理のデザイン。

ベジタリアンのお皿絶品!

そしてパティシエはデュカスグループ新人のLouis TAINE ルイ・テーヌ。

香り、テクスチュール(舌触り)、色彩の繊細なニュアンス。

五感に驚きを与えてくれるデザート。

ショコラにプラリネをのせたデザート ⒸPMONETTA

ワインセラーにはフランス産100のリスト。

ブルゴーニュならルロワ、ボルドーならペトリュスとか。

(何て書くのは容易く。ソムリエにオーダーするにはそれなりに度胸が、ね。)


そうそう、ここで一言。

「デュカス」と聞くと、「敷居が高い」レストランばかりと思いがちなのですが。

5区にちょい前にオープンしたイタリアレストラン「クッチーナ Cucina」はパリ標準価格でとても美味しい。

2区のSPOONはメニューを一新し、日本人シェフがワールドワイドな料理を提案。

LE CAFE ALAIN DUCASSE ル・カフェ・アラン・デュカスでは立ち飲みでホント気軽にコーヒーを味わえます。

このデュカスのランチ・ディナークルーズも、既存のレストラン船と比較したら決して高くないプライス。

もうひとつのパリの旅として、忘れがたき思い出となることでしょう。

デュカスが選んだデザイナーは?

Maurizio Galante & Tal Lancman

キュイジーヌ(料理)、ワイン_ これを堪能するには。

インテリア、そしてサービスするスタッフのユニフォームとの調和なくしてありえない。

デュカス・スュール・セーヌには、アーティスティック&カルチャーディレクターというポジションがあるのです。

天才シェフがこの役職に白羽の矢を立てたのは、オートクチュールのクチュリエ、マウツィオ・ガランテとインテリアデザイナー、タル・ランスマンのデュオ。

タルは、「グラン・パレをイメージしながらデザインした」と話してくれました。

グレーのハーモニーが美しい船内/セーヌシルバーとゴールドでセーヌを反射したような天井

「日常にマジックをつくること。それは船内にもうひとつのセーヌのインスピレーションをつくること。セーヌの水面の緑がかったグレーを船内のカラーに選びました。」

セーヌが描かれた一枚仕上げの贅沢な絨毯、その続きのようにいくつもの線でパリが描かれた椅子。

1枚仕立てのグレーの絨毯/パリの街を流れるセーヌと船の停泊場がマークされています

マウリツィオがデザインしたスタッフのユニフォーム。

3つのトーンのグレーが重なり合いながら、水面のレストランにもう一つのパリが創造されました。

オーダーメイドのユニフォームカフスにはパリを象徴するモチーフが

フランスルネサンスのモチーフが刺繍されたテーブルクロスには、大西洋横断豪華船で使用されていた銀のフォークとナイフ。

ちょうどよい重さで心地よい。

エッフェル塔とセーヌの波が刻まれた銀のプレート、生け花やテーブルクロスと同じモチーフのお皿は全てオリジナル。

シルバーのテーブルウェア エッフェル塔とセーヌの波が刻まれています

マウリツッオは、「デュカスのキュイジーヌが与えるピュアな素晴らしさを船内に再解釈したかった」と。

その彼によるサプライズが船内のカルチャースペース。

マリー・アントワネットからマダム・グレまでのフランスのモードがミニギャラリーに展示されています。

代表するシルエットのローブを着た人形たち。

マウリツィオのアトリエで手作業で制作されました。

(余談ですが、タル&マウリツィオは日本の怪獣マニア、かなりの。とってもステキなデュオ!)

左からタル、デュカス、マウリツィオ

エッフェル塔から出発し、ビアケイムの橋から左岸のモニュメントを見ながらベルシーでUターンして右岸へ。

光と水がつくりだすもうひとつのパリの中での食事。

現実から心地よい断絶した約1時間30分の美味しい旅。

モードのギャラリー

ランチクルーズは12時45分、ディナークルーズは20時30分出発。

時間厳守です。

船は待ってくれません。


詳しくはこちらで(英語版)。

https://www.ducasse-seine.com/en/


前回までのレポートはこちらから


松井孝予

(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。

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